震災からの復興

2018年07月24日

 

文化や伝統がつくる「絆」

Keywords:  震災復興  レジリエンス  市民社会・地域 

 

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東日本大震災の被災者支援プロジェクト「JKSK結結プロジェクト」が、東京新聞への連載を通じて被災地復興の様子を伝える「東北復興日記」。今回は、住民自身がつくり出す絆につながる文化や伝統について書かれた記事をご紹介します。

仙台市若林区は人口約136,000人、面積約50平方キロメートルと、市内で一番小さい区です。2011年3月の東日本大震災では区域の半分以上が浸水し、300人を超える尊い命が失われるなど甚大な被害を受けました。

2017年に生誕450年を迎えた藩祖・伊達政宗公が、晩年の居城を設けたのは若林区。杜の都の中でも、とりわけ豊かな自然に恵まれ、歴史と伝統に育まれた地域でした。沿岸部を見渡せば、かつて仙台唯一の海水浴場としてにぎわった深沼海岸に人影はなく、美しい松林も跡が残るだけです。

市内に約1,500戸あった避難者用のプレハブ仮設住宅は2016度末で撤去が完了。区内13カ所の復興公営住宅と6カ所の防災集団移転地で、新たな暮らしとコミュニティーが生まれています。

ただ、順調なことばかりではなく、県内の他市町や福島県から避難し、みなし仮設に住まい続けている方も少なくありません。震災は広大な地域を一度に襲いましたが、復旧や復興はまだらに進み、そのことが多くの人の心に重くのしかかります。住まいやなりわいが再建できても、心の傷が癒やされるのはこれから。復興とは、被災者一人ひとりにとって異なり、恐ろしく息の長い事業であることを改めて実感します。

被災した場所で再建に取り組む六郷東部地区で先日、震災後初の「ふるさと交流祭」が開かれました。閉校した東六郷小学校に残る「黒潮太鼓」の伝統は、お隣の六郷小学校に引き継がれ、児童たちの力強い演奏が、涙と笑顔を誘いました。

震災後、「絆」という言葉が注目されましたが、確かな絆は住民自身がつくり出すものであり、そこには祭りや神楽・太鼓など、古くから受け継がれてきた文化や伝統が大きな力を果たすことを、もっと見直すべきではないでしょうか。そんな大切なものの価値を発信していくのも、私たちの重要な役割だと思っています。

仙台市若林区長
白川由利枝

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