持続可能な社会に向けて展開中の、興味深くわくわくする日本の動きを世界のみなさんとも共有することで、先進国にも発展途上国にも、そして日本国内にも、刺激とヒント、きっかけ、勇気と励ましを届け、将来世代に少しでも美しい地球と住みやすい社会を手渡したい――そのような思いで私たちNGOジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)は活動しています。
私たちは今、経済成長至上主義による「成長せざるを得ない」社会や経済の構造にがんじがらめになっています。その結果、人間の経済活動は、資源やエネルギーなどの供給面でも、CO2や有害廃棄物などの吸収面でも、地球が支えられる限界を超えてしまいました。温暖化や生物多様性の危機などは、「限界を超えていること」が日々の暮らしや未来世代の幸せに大きな影響を及ぼし始めている「症状」の一部です。
同時に、こうした社会や経済の構造は、人と人、地域、社会、自然、世界や地球とのつながりを断ち切ってきました。人は、人や社会とつながっていなければ生きていけない存在なのに、短期的・局所的な効率向上の強迫観念にとらわれて、本当に大事なこと――自分の心とのつながりや、社会や自然とのつながり――を見失ってきました。さまざまな社会の問題も、地球環境の悪化も、「つながりの喪失」が生み出した必然の帰結ではないかと思うのです。
日本では、従来の文化が大事にしてきた「もったいない」や「自然との共生」をもう一度企業活動や地域づくりに採り入れようという動きや、日本の誇る高い技術力を活かして持続可能性を高めようという取り組み、政府や自治体の取り組み、市民やNGO/NPOによる草の根の取り組み、社会や人のつながりを取り戻そうという試みがあちこちで生まれ、展開し、広がっています。
加えて、日本が世界に先駆けて人口減少・高齢化社会に突入、進行していることを、地球の限界の範囲内で幸せに暮らしていく定常型社会へのよいきっかけと捉え、具体的な取り組みに結びつける動きも始まっています。また、2011年3月11日の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故のもたらしたもの、教えるものを世界とも共有することも大事だと考えています。
地球や地域の環境が悪化していく一方で、日本を含めた世界の各地で「変えるための試みや取り組み」が進められています。しかし、おそらく残念ながら、当面は、地球環境は悪化の一途をたどるでしょう。その中で、絶望に陥ってしまう人も出てくるかもしれません。そのときそれでも、こんこんと湧き出る泉のように、日本から毎日1本でも前向きな情報が届くことで「自分たちももう少しがんばってみよう」と思う人が出てくれることを願っています。Japan for Sustainabilityの「for」には2つの意味があります。「~のために」(世界の持続可能性のために日本ができること)と「~に向かって」(持続可能性に向かって進む日本)です。JFSは世界にとっての「希望の泉」でありたい、と思っています。
ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)代表 枝廣淳子