震災からの復興

2016年09月14日

 

自給自足でつながる

Keywords:  震災復興  レジリエンス  食糧 

 

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東日本大震災の被災者支援プロジェクト「JKSK結結プロジェクト」が、東京新聞への連載を通じて被災地復興の様子を伝える「東北復興日記」。今回は、2016年2月9日に掲載された、風評被害を打開する取り組みをご紹介します。

東日本大震災を機に早大と山形県高畠町の星寛治さんら有機農家の有志が始めた「たかはた共生プロジェクト」は、田園の自然・暮らしを活用した農家体験や野菜作りを柱に、風評で失われた生産者と消費者の信頼を取り戻し、その関係を次世代につなぐための新しい「提携」のあり方を模索することにしました。

まず農産物の流通・分配方法について経済的に無理のない、継続可能な提携を実践する「青鬼クラブ」が2013年にスタート。町出身の童話作家浜田広介の「泣いた赤鬼」に登場する青鬼にちなんで名付けたものです。

クラブの会員は大学生や教員、首都圏の市民ら40人。有機栽培で天日乾燥したコメを毎月25~30人が、3キロ、5キロ、10キロなどのコースを選び、毎月宅配で入手します。また、非常時に互いの生活を助け合う「震災協定」を結び、農家と消費者が一緒になって「自給自足」の価値を共有する「青鬼農園」も始めました。

風味豊かなソバをはじめ、名物の青菜(せいさい)、大根など8品目ほどを農家の指導のもと、会員らが栽培するものです。高畠では全ての学校で農業を学ぶ「耕す教育」を1976年から実践していますが、この青鬼農園は高畠第三中学の学校農園と同じ農地をお借りしたもので、中学生たちも夏野菜を育てています。

農業と食について対話し発信する「青鬼サロン」も2013年から開始。2015年9月には毎日新聞本社一階「毎日メディアカフェ」で、高畠第三中の修学旅行生が育てた野菜を、価格や売り方を考え、自分たちで販売しました。

ジャガイモやスイカ、枝豆など2百キロの農産物は15分で完売。震災後の思いを込め、「ふるさと」などの合唱曲を披露する場面では、行き交うサラリーマンが足をとめ、思わず涙を浮かべるシーンもありました。

風評被害を打開する消費者と生産者の信頼関係「提携」の結び直し、分かち合い社会の実践が始まっています。

県立広島大学大学院経営管理研究科准教授
早稲田大学早稲田環境学研究所客員准教授
たかはた共生プロジェクト副代表
吉川 成美

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