エネルギー・地球温暖化

2014年08月15日

 

「ソーラーシェアリング」発電所の取り組みと3つの壁

Keywords:  再生可能エネルギー  環境技術 

 

写真:ソーラーシェアリング
イメージ画像:Photo by Kazuko Kojima

固定価格買取制度が導入されてから、日本では、再生可能エネルギーの中でも短期間で簡単に導入できる太陽光発電が各地で広がっています。メガソーラーは「適地はほぼ設置済みまたは計画中」とも言われ、設置場所の工夫も広がっています。そのひとつが、農地の上で太陽光発電をしながら、その下で農作物を作る「ソーラーシェアリング」です。今回、節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て、記事を要約し、現場のようすをお伝えします。

「ソーラーシェアリングの案件を引き受けるまでは、さまざまな問題が隠れていることに気付いていなかった」(設計から施工までを担当した発電マン代表取締役の岩堀良弘氏)。ソーラーシェアリングとは、作物を植える農地の真上に藤棚のような太陽光発電システムを設ける仕組み。1つの土地を農業と発電でシェアするという意味だ。

垂直な柱を農地に複数設置し、その上に太陽電池モジュールを載せる架台を水平に渡す。メガソーラーとは異なり、太陽電池モジュール同士の間隔を広く取り、太陽光を地面に当てるための仕組みが必要だ。

国内のソーラーシェアリングは営農と太陽光発電の両方に興味がある個人の取り組みとして始まった。当時はソーラーシェアリングに向く市販の部材はなく、自作に近い形だったという。

加えて農地法の制約が大きかった。農地を営農以外に利用する場合は、一時転用手続きが必要だ。太陽光発電について、どのような場合に農地の一時転用を認めるのか、指針すらも定まっていなかった。そうした中、2013年3月に農林水産省が指針となる文書を公開し、ソーラーシェアリングに取り組もうとする農家が急増した経緯がある。発電所実現に立ちふさがった3つの壁とは、農地転用を認める農業委員会、ソーラーシェアリングに適した部材、農家の資金調達だ。

農地の転用は、その地域の農業委員会が認める必要がある。「農林水産省の文書が十分には浸透していない農業委員会がある。対応が実に厳しかった」(岩堀氏)。岩堀氏が静岡県の農業委員会と交渉した場合は、3カ月を要したという。

第2の壁は太陽電池モジュールだ。「ソーラーシェアリングでは太陽電池モジュールを高い位置に設置するため、軽くなくてはならない。モジュール自体の影やモジュールが受ける風の影響を少なくするため、小さいものが必要だ。住宅用の太陽電池モジュールは出力を高めており、200W程度の大型品を多用している。今回必要だったのは出力が100W程度のものだ。ところが、大手メーカーはいまだソーラーシェアリ ングに適した寸法、出力のモジュールを用意していない。そこで、カスタマイズを受け付けるメーカーに依頼した」(同氏)。

図:静岡県伊豆の国市と発電所の位置

岩堀氏が初めて手掛けたのが、静岡県伊豆の国市奈古谷に水田と畑を所有する農家の事例で、太陽電池モジュールを手動回転させる機構『ソラカルシステム』を取り入れた。岩堀氏によれば、水田において手動で太陽電池モジュールを回転させる機構を備えた設備としては、国内初の事例だ。

ソラカルシステムは水平な単管とそれを保持し、ウインチで回転させる機構をいう。作物の種類によって光量を調節できる他、季節に応じた回転により 発電量を5%程度増やすことができる。この他、強風時の風や積雪を避けやすい、モジュールの洗浄が容易といった特徴がある。

2014年6月に完成した太陽光発電所「Smart Life発電所」は、隣り合わせになった水田と畑からなる。水田では稲作、畑ではサトイモを育てる。サトイモは苗から収穫に至るまで強い光を嫌う 性質がある絶対陰生植物であり、ソーラーシェアリングに向いていると考えられる。

水田、畑とも面積はそれぞれ約1000m2あり、設置した太陽光発電システムの出力は44kW(合計88kW)。5.5kW対応のパワーコンディショナーを8台ずつ、架台脇に設置している。いずれも固定価格買取制度(FIT)により全量を東京電力に売電し、売電収入として年間約400万円を見込んでいる。

ソラカルシステムを採用した場合、出力50kWのソーラーシェアリング発電所を立ち上げるには、部材費用と工事費用を合わせて1500~1700万円が必要だという(造成費別、税別)。

ソーラーシェアリングでは農地に直接施工する。「柱(単管)を支えるために深さ70cm、直径20~30cmのコンクリート基礎を作っており、そこに単管を60cm程度埋め込んでいる。これは水田、畑とも同じだ」(同氏)。一時転用の対象となるのは、この部分だけだ。

発電マンが施工したシステムは農家側にとって営農が継続しやすいのだという。現代の営農ではさまざまな農業機械を利用するが、トラクターを動かすための空間が確保されているのだ。

出典:スマートジャパン

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