生物多様性・食糧・水

2003年02月02日

 

荒瀬ダム廃止へ 日本ではじめての既存ダムの撤去

Keywords:  生態系・生物多様性  地方自治体 

 

熊本県の潮谷義子知事は、発電用の県営荒瀬ダムを撤去することを決めた。日本で初めての既存ダムの撤去となる。水利権の免許が切れる2003年3月に、2010年3月までの7年間の期限で更新し、その後撤去工事に着手する予定。

同ダムは高さ約25メートル、幅約210メートル。総貯水量約1000万立方メートルで、発電用ダムとして1955年に完成したもの。

県では、継続利用を前提に国土交通省と協議していたが、周辺住民はダム湖周辺で発生する赤潮や悪臭などの環境悪化、放流に伴う振動などの弊害から、撤去を強く要望していた。地元の坂本村議会も水利権更新に反対する意見書を可決している。

さらに、同ダムの供給電力量は、県内電気総需要量の1%未満で、県が費やさなくてはならない環境対策費や修繕費を考えると、費用対効果の面からも発電継続に対する疑問の声が上がっていた。

撤去費用は総額約47億円の見込み。国からの補助などがあれば、開始時期の前倒しも検討する。県では、荒瀬ダム撤去へ向けて、工法などを検討するプロジェクトチームを作り、荒瀬ダム撤去を進める予定。

ちなみに、日本には、建設中のものも含め、約3,200ものダムがある。毎年20以上のダムが新しく完成しているといわれ、OECD諸国の中で、積極的に大規模ダムを建設している唯一の国という。日本の就業人口の約10%を建設事業関係者が占めていることも、ダム建設の大きな原動力のひとつ。

それだけに、今回の日本初のダム撤去は新しい動きとして注目されている。撤去が決まった荒瀬ダムのある球磨川上流には、関連費用もあわせて4100億円もの税金を投じ、川辺川ダムという巨大な治水ダムの建設が進んでおり、地元住民の反対運動とあわせ、今回のダム撤去の決断がもたらす影響が注目される。






登録日時: 2003/02/02 07:45:22 AM

英語記事はこちら


 


 

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