ニュースレター

2017年12月21日

 

中高生の環境活動を支援 ~ 第5回中高生環境・社会活動グループ実践賞

Keywords:  ニュースレター  教育    生態系・生物多様性  食糧 

 

JFS ニュースレター No.183 (2017年11月号)

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JFS代表・枝廣淳子も教授を務めている東京都市大学環境学部が主催する「中高生環境・社会活動グループ実践賞」。中高生の環境保全に向けた行動を支援することを目的に2013年から年1回コンテストを開催しており、2016年からはJFSも協力団体に加わっています。

5回目となる2017年の表彰式は10月28日に開催され、優れた取り組みを行っていると認められた3つのグループが優秀賞を受賞。その中から最優秀賞が選ばれました。

評価基準は、「環境・社会活動の内容と方法」「環境・社会活動の成果」「他の中高生の巻き込み度合い」「他主体の巻き込み度合い」「参加中高生の満足度・学びの深さ」「社会的インパクト」「自立発展性・活動の継続性」の7点。枝廣を含む6名が審査にあたっています。

今月号のニュースレターでは、第5回中高生環境・社会活動グループ実践賞で表彰された、3つの取り組みをご紹介します。


生物による水質浄化システム「バイオエンジン」の開発と普及

最優秀賞に輝いたのは、青森県立名久井農業高等学校・環境システム科・植物研究グループで植物研究や保全活動を行っている「TEAM FLORA PHOTONICS」。最優秀賞および、環境マネジメント学科長賞を受賞しました。

このグループは、湖沼に流れ込む窒素やリン酸など、栄養を多く含んだ生活排水や工業排水が原因の富栄養化による環境汚染に着目し、研究を進めました。これらの汚染は機械を使って浄化することもできますが、彼らはエネルギーを必要としない方法を選択。5年かけて、観葉植物のサンパチェンス・硝化菌・菌根菌を利用した、生物による水質浄化システム「バイオエンジン」の開発に成功しました。

2016年から行っている地元の中学校の池での実証実験では、毎年発生して悪臭を放っていた藻類が全く発生しないという結果となりました。これまでに8か所に浄化システムを設置。エネルギーを使わずに生物の力で水質浄化でき、更に水上で美しい花を咲かせることから「世界で最も美しい水質浄化システム」と呼ばれ、市民の皆さんに喜ばれています。

受賞理由:チームで開発した水質浄化システムを用いて、地元の役場や図書館の池に本システムを導入し、地域の環境浄化に寄与するとともに、環境教育活動も実践していることは高く評価できる。また、地域活動にとどまらず、開発したシステムを製品化して国内外の水辺環境の改善に寄与したいとの目標があり、今後も継続した活動が大いに期待できる点を評価した。

甦れ!レンゲツツジの郷CHAPTER3 ~レンゲツツジの大群落復元への試み~

大分県立玖珠美山高等学校・チームFlower'sは、絶滅危惧種のレンゲツツジの保護活動を通じて、地域の人々と里地・里山の自然とのつながりを取り戻す取り組みで、環境創生学科長賞、環境コミュニケーション賞を受賞しました。

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Copyright大分県立玖珠美山高等学校・チームFlower's All Rights Reserved.

Flower'sは、清田川地区、教育委員会、美山高等学校といったステークホルダー間の連携も考え、プロジェクトを進めています。現地調査と復元のための話し合いを行い、レンゲツツジは若木の更新が少ない、種子が小さく発芽に時間がかかる、盗掘や害獣による食害の被害を受ける、などの課題を抽出し、植え戻しの方針を策定。玖珠町教育委員会、大分県教育委員会文化課へ植え戻しを願い出たところ、清田川地区のレンゲツツジの種子であること、3年生以上の苗を植えることを条件として、許可が下りました。

Flower'sでは、小学校への出前授業や駅での植栽、HPなどを利用した啓発・広報活動を行い、地域を広く巻き込むことにも取り組んでいます。今後は、ハビタットの環境整備、個体数や遺伝的多様性の調査、少子高齢化により減少する労働力の補填にも取り組んでいきたいとしています。

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受賞理由:県教育委員会や町役場、保護団体、商工会、企業などとの密接なコミュニケーションを取りながら、かつ上級生から下級生へ活動を引き継ぎながら科学的フィールド研究の基本を学んでいる。里山バンクやミティゲーションなど最新の研究も取り入れた活動を行っている点を評価した。

湧水利用の可能性

岐阜県立大垣養老高等学校・食品科学科・食品化学班は、地元の湧水や滝の水を利用した3つのプロジェクトを立案。商品化を目指す取り組みで、地域連携賞を受賞しました。食品化学班では、養老町固有の資源である養老の滝と菊水泉を使用した、地元の高校でしかできない研究活動を行っています。

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Copyright岐阜県立大垣養老高等学校・食品科学科・食品化学班 All Rights Reserved.

活動は、酒やパンづくりに用いる養老の滝からの酵母菌分離と、菊水泉を使った醤油づくりから始まりました。養老の滝と菊水泉の水質分析を行い、環境省による河川環境基準を満たしていることを確認。4種類の酵母菌と思われる菌の分離に成功し、遺伝子同定試験により、酒やパンづくりに適性のある酵母を発見しました。

醤油については、製造するだけにとどまらず、学生ならではの視点から醤油の手づくりセットを考案しました。町の醸造メーカーにインタビューへ行きヒントをもらい、実験を重ね、オリジナルのキットの開発に成功。町の観光協会からは2000年に製造を中止した菊水泉を使った養老サイダーの復刻を依頼され、サイダーづくりにも挑戦しました。

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受賞理由:サイダーメーカー、醸造メーカー、行政、大学など、専門家のアドバイスや共同研究を通して、高度な知識を修得し、中学生に地域環境を意識させる環境教育活動も展開している。プロジェクトの内容、規模・レベルに対して活動人数が少ないが、活動内容がすばらしく、今後も大いに期待される活動である点を評価した。


高校生の発表とは思えないような質の高い内容で、意欲的な研究に驚くものばかりでした。ある問題から解決策を導き出し、新しいことに挑戦し、研究を進めていくという行動力には、とても感心させられます。新しい発見や発明が、地域の活性化や話題性にも繋がると考えられるので、今後も更なる研究の成果に期待したいと思います。

スタッフライター 安西優花

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