震災からの復興

2018年05月13日

 

環境汚さない農業を

Keywords:  震災復興 

 

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東日本大震災の被災者支援プロジェクト「JKSK結結プロジェクト」が、東京新聞への連載を通じて被災地復興の様子を伝える「東北復興日記」。今回は、農園経営者からの寄稿を転載し、次世代へ安全な環境を残すための取り組みをご紹介します。

福島県いわき市四倉町上柳生で、妻、義母と3人で暮らしています。8年前に60歳で会社を定年退職し、農業を始めました。現在は1.5ヘクタールの農地で綿、野菜、果樹を栽培しています。

東日本大震災が起きたのは、農業を始めて2年目。沿岸から8キロメートル離れた中山間地域なので津波被害はなかったものの、原発事故の放射能汚染の影響が深刻でした。農家は見えない放射能による生活と健康への不安におびえました。情報の混乱も続く中で離農が加速し、休耕地が増えました。

もともと農地が荒れることに心を痛めていた私は、行政指導に従い放射能検査を受けながら農業を再開しました。その過程で気づいたのは、環境はかけがえのないもの、幸せな暮らしには安心できる環境が一番大切であるということでした。それで環境を汚さない農業へ切り替えました。次世代へ安全な環境を残すことが、残りの人生の目標です。

風評被害に苦しむ福島の農業を、塩害に強く、放射能吸収率も極めて低い綿の栽培で再生させる「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」が2012年に始まり、わたしは2014年から参加しました。

以来、2千人を超える大学生や企業人が私の菜園を訪れました。オーガニックコットンや野菜の栽培に共に汗を流し、交流しています。地域とのつながりも増え、地元の幼稚園児や小学生が農業体験とオーガニックの学習にやってきます。

市内外から来る人たちが昨年、「畑の会」をつくりました。メンバーは野良仕事や自然との触れ合いを楽しんだり、農薬や化学肥料を使わない有機栽培を実習したりしています。都市と農村の交流を通して、支え合う生き方を実践する場にもなっています。菜園を訪れる人々に、健康な農地で作る安全な作物のこと、有機栽培ときれいな環境の大切さをお伝えしています。

柳生農園経営
福島 裕

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