市民社会の動き

2016年05月05日

 

エネルギーの地産地消で町が変わる、自治体が電力の小売に乗り出す

Keywords:  市民社会・地域  エコ・ソーシャルビジネス  エネルギー政策 

 

中之条電力 ウェブサイト
中之条電力 ウェブサイト

電力会社を頂点とする従来の市場構造を転換する試みが、全国各地に広がっています。自治体が主導して再生可能エネルギーを増やしながら、同時に地域内で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築します。節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て、記事を要約し、エネルギーの地産地消の取り組みについてご紹介します。

全国で約1,700に及ぶ自治体は、地域の活性化に向けた実効力のある対策を求められている。新たな町づくりを目指して再生可能エネルギーの地産地消を推進する動きが活発になり、自治体みずから電力の小売に乗り出すケースも増えてきた。

鳥取市は、鳥取ガスと共同で電力小売の新会社「とっとり市民電力」を2015年8月に設立。12月には再生可能エネルギーによる発電事業を支援する「とっとり環境エネルギーアライアンス」を地元の企業6社と設立して、地域内でエネルギーを供給できる体制づくりを進めている。

地域内で発電事業と小売事業を拡大することによって、新たな雇用を創出しながら災害に強いエネルギー供給システムを構築していく。電力に加えて資源や資金を地域内で循環させて活性化を図る。

福岡県みやま市は2015年4月から電力の小売事業に参入。地元の銀行などから出資を受けて「みやまスマートエネルギー」を設立、市役所や学校などの公共施設32カ所を皮切りに電力の供給範囲を拡大中だ。

出力が50kW(キロワット)未満の太陽光発電設備を対象に、固定価格買取制度よりも1円高い価格で電力を買い取る事業を開始。市民が再生可能エネルギーを導入する取り組みを支援しながら、夏の電力需要が増えるピーク時に地域内のエネルギーを有効に活用する。

みやまスマートエネルギーは、収益を農林業や観光業などの地域産業に投資する方針だ。市民向けには、電力の使用量や室内の温度・湿度のデータを利用した高齢者の見守り・健康チェックサービスなどを提供する。

全国の自治体の中で電力の小売事業に初めて取り組んだのは群馬県の中之条町である。人口1万7000人の町が2013年8月に「中之条電力」を設立して大きな話題を呼んだ。

中之条電力は再生可能エネルギーを中心に電力の小売を手がけるV-Powerと共同で事業を展開する。特に太陽光発電の開発と調達に力を入れている。町内の3カ所で運転中のメガソーラーから電力を購入して、町役場などの公共施設に電力を供給している。

太陽光発電による電力の小売事業は大阪府の泉佐野市も開始、近隣の太陽光発電所から市内の公共施設に供給する。民間の新電力と共同で設立した「泉佐野電力」は、自治体が出資する事業者では初めて小売電気事業者の登録も済ませた。

2015年12月末の時点で、自治体が出資する小売電気事業者は2社。泉佐野電力のほかに、岡山県の真庭市が出資する「真庭バイオエネルギー」だ。山林で大量に発生する林地残材や製材所から出る端材を有効に活用する。市内の事業所などに木質バイオマスボイラー用の燃料を供給している。

真庭市では2015年4月に「真庭バイオマス発電所」が運転を開始。年間に2万2000世帯分の電力を供給することができる。真庭市は「バイオマス産業杜市(とし)構想」を掲げて、林業と製材業を中核に新しいバイオマス産業の育成に取り組んでいく。

地域の民間企業に加えてエネルギー分野の大手企業が参画するプロジェクトも増えてきた。静岡県の浜松市はNTTファシリティーズやNECキャピタルソリューションの出資を受けて、「浜松新電力」を2015年10月に設立した。

市内のメガソーラーや清掃工場で発電した再生可能エネルギーの電力を買い取って、浜松市の公共施設のほかに民間企業や家庭にも供給する予定だ。地域全体の需給管理はNTTファシリティーズが請け負うことになっている。

全国各地でメガソーラーを展開するNTTファシリティーズは岩手県の北上市でも、自治体と協定を結んで小売事業を開始した。市内に設立した「北上新電力」がメガソーラーや小水力発電所から電力を調達して、市の庁舎や防災拠点に電力を供給する。

市町村にとどまらず、県が参画するプロジェクトも始まった。神奈川県は湘南エリアを中心に電力の小売事業を展開する「湘南電力」と協定を結んだ。湘南電力は県の補助金を受けて、県内で稼働中の太陽光発電設備などから電力を購入する。

山梨県では東京電力が協力して、再生可能エネルギーの地産地消と企業の誘致を促進する新しい事業に着手した。県と東京電力が共同で設立した「やまなしパワー」を通じて、県営の水力発電所の電力を企業に安く提供する。

対象は県内の中小企業のほか、新規に山梨県に進出する大企業も含む。県の産業振興策に合致する企業を優先的に選んで、再生可能エネルギーを生かした産業の育成を目指す。官民連携によるエネルギー地産地消の取り組みは、全面自由化が始まる4月以降にますます活発になっていく。

出典:スマートジャパン

English  

 

 

このページの先頭へ