エネルギー・地球温暖化

2016年02月24日

 

下水汚泥から2500万kWhの電力、水素も取り出し燃料電池車が動く

Keywords:  再生可能エネルギー  3R・廃棄物  交通・モビリティ 

 

写真:水素ステーション
イメージ画像: Photo by Ryu Hayano Some Rights Reserved.

埼玉県は、下水処理場で発生する汚泥を利用したバイオマス発電事業を行います。2019年から発電を開始し、2029年までに発電能力を一般家庭5,000世帯分にあたる合計2500万kWhまで拡大します。処理場内には太陽光発電も導入し、さらに汚泥から水素を取り出して燃料電池車への供給にも取り組む計画です。節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て、記事を転載し、埼玉県における下水を利用したバイオマス発電事業の取り組みについてご紹介します。

下水道には2つの種類がある。1つが河川、湖など複数の市町村にまたがる水域の水質保全を行う流域下水道で、これは都道府県が管理している。流域市町の下水を県が管理する下水処理場で一括処理する仕組みだ。もう1つは公共下水道で、こちらは主に市街地などの下水を排除する役割を担っている。管理は基本的に市町村が担当する。

県面積に占める河川割合が全国1位と水資源に恵まれる埼玉県は、流域下水道を処理する下水処理場を8つの流域で合計9カ所管理している。このうちの3つは処理水量で全国トップ3に入っており、9カ所の合計処理量は1日当たり約177万立法メートル。これはさいたまスーパーアリーナ2.4杯分に相当し、県人口の約7割となる約530万人分の下水を処理している。

毎日これほど大量の下水を処理すれば、それに伴い多くの汚泥が発生する。こうした汚泥は固形燃料や建設資材に利用しているが、埼玉県知事の上田清司氏は2015年9月9日の記者会見で、さらにこの汚泥をバイオマス発電にも利用する計画を明らかにした。

同県では下水処理による汚泥から、年間約1300万Nm3(ノルマル立法メートル)のメタンガスが発生している。このメタンガスを利用して、バイオガス発電を行う仕組みだ。まず2019年から元荒川、中川水循環センターの2カ所で発電を開始し、他の処理場にも順次拡大していく。

2029年には4カ所の処理場で発電を行う計画で、合計で年間約2500万kwhの発電量を見込んでいるという。実現すれば、一般家庭約5,000世帯分の電力を再生可能エネルギーで得られる計算になる。さらに最大で年間約1万2000トン相当の温室効果ガスを削減できる見込みだ。これらの電力を全て固定買取価格制度を利用して売電するとすれば、現在の買い取り価格で換算して10億円近い売電収入が見込める。

さらに中川、小山川の2つの処理場では敷地内で太陽光発電にも取り組む。こちらはバイオガス発電より一足早く、2016年から発電を開始する。2カ所を合わせた太陽光パネルの設置面積は3.7ヘクタールで、年間の合計発電量は一般家庭800世帯分に相当する約400万kWhを見込んでいる。

下水処理場を水素ステーションに

汚泥をエネルギーとして活用するには、先述したように発生したメタンガスを燃焼してタービン回転させて電力を生む方法に加え、メタンガスから水素を取り出して利用するという方法もある。埼玉県はこの方法を利用して、下水処理場で汚泥由来のCO2フリーな水素製造にも取り組む。

メタンガスから取り出した水素は、下水処理場内に設置した水素ステーションから燃料電池車(FCV)や燃料電池で駆動する物流倉庫用のフォークリフトなどに供給していく計画だ。汚泥由来のバイオガス発電を行う4カ所の下水処理場に水素ステーションを設置する。

埼玉県はこの計画を2020年から開始する予定で、現在、中川水循環センターで事業化のモデル調査を実施している。下水処理場内への水素ステーションの設置や水素サプライチェーン構築に関する調査に加え、事業収支と実現化方策の検討を進めている段階だという。この調査の進捗について上田知事は「基本的に実施可能だという方向性が見えてきている」と述べている。

水素ステーションの普及拡大にも寄与

埼玉県は2020年までに県内に水素ステーションを17基設置し、FCVを6000台普及させるという目標を掲げている。さらに2025年にはこれらをそれぞれ30基、6万台にまで拡大させる方針だ。2015年9月時点では、9基の水素ステーションが設置されている状況だ。

上田知事は今回発表した下水処理場に設置予定の4台の水素ステーションについては「2025年までに30基という計画に、さらに4カ所を加えるということも考えられる」としている。

「下水道処理場は全国各地に約2,140カ所ある。今回の埼玉県の取り組みを全国に発信することで、全国に下水処理場にも水素ステーションを設置できるということをアピールできるのではないか思っている。一般的には水素タンクは海岸部に設置されることが多いが、内陸部でもそういったことが可能になるということを埼玉県が先駆けて証明していきたいと考えている」(上田氏)。

出典:スマートジャパン

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