エネルギー・地球温暖化

2015年07月03日

 

2030年に再生可能エネルギー33%へ、原子力にこだわらない環境省の予測

Keywords:  再生可能エネルギー  エネルギー政策  政府 

 

環境省によると、現行の施策に加えて合理的な対策を実施することにより、2030年には国内の発電電力量の33%を再生可能エネルギーで供給できる想定になっており、経済産業省が検討中のエネルギーミックスよりも、意欲的な拡大を見込んでいます。節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て、記事を要約し、環境省がまとめた再生可能エネルギーの将来予測についてご紹介します。

環境省は2050年までの再生可能エネルギーの規模を見極めるために、シンクタンクの三菱総合研究所に委託して将来の導入見込量を推定した。平均的な中位の予測では、従来の施策だけを実施する低位の状況に加えて、CO2排出量を削減するための合理的な対策を実施した場合を想定している。その結果、2030年には再生可能エネルギーで3122億kWhの電力を供給することができる。

図:再生可能エネルギーによる発電電力量の予測
再生可能エネルギーによる発電電力量の予測
(出典:環境省、加工:JFS)

エネルギーの種別では、発電設備が急増する太陽光が最も多く1173億kWhに拡大する。次いで水力が既存の大規模と新規の中小規模を合わせて863億kWh、風力が537億kWhまで伸びる。さらにバイオマスと地熱、海洋エネルギーによる発電量も2030年までに大幅に増える見込みだ。国内の発電電力量は2013年度の実績で9397億kWhだった。仮に2030年の発電電力量が2013年度と同じ水準だったとしても、再生可能エネルギーで33%を占めることになる。需要の減少を想定すれば、35%以上に拡大できる可能性も大いにある。

発電設備容量は、2030年(中位の場合)には再生可能エネルギー全体で1億6491万kWに達し、原発165基分に相当する。とはいえ全体の6割を太陽光が占めるため、実際の発電電力量は原子力と比べて3分の1程度にとどまる。それでも2030年には国内の原子力発電所をすべて稼働させた場合と同等以上の発電電力量を見込むことができる。

環境省の予測は、固定価格買取制度の継続を前提にしており、太陽光や風力に対しては出力抑制の影響も織り込んだ。ただし地域を越えて需給調整を図るなど、可能な限りの回避策をとった場合の予測値である。買取価格のうち、太陽光は2030年に向けて徐々に低下していく想定だ。2030年までには太陽光の発電コストは火力と同じ水準まで下がる見通しであり、国民が差額を負担しなくても済む状態に近づいていく。

環境省が再生可能エネルギーの導入量を予測するにあたっては、原子力の利用を前提にしていない。経済産業省が検討中のエネルギーミックスでは2030年に原子力を20%程度、再生可能エネルギーを25%程度に拡大する案が有力になっている。環境省が再生可能エネルギーで30%以上を可能としている予測との違いは、ひとえに原子力の再稼働を優先するかどうかにある。

発電に伴うCO2排出量を削減するためには、原子力か再生可能エネルギーを増やす必要がある。この2種類の電源の位置づけが経済産業省と環境省で違う。既存の発電設備を優先して放射能汚染のリスクを高めるのか、新規の発電設備を増やして電力安定供給の課題に取り組むのか、国の未来をかけた大きな分岐点になる。

世界各国のエネルギー政策をとりまとめるIEA(国際エネルギー機関)の予測では、2030年に全世界で再生可能エネルギーの割合が30%に到達する見通しである。その水準に日本が追いつくためには、経済産業省の目標値を環境省の予測値に近づける必要がある。両省で折り合いをつけて、先進国にふさわしいエネルギー供給体制を目指したい。

出典:スマートジャパン

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