エネルギー・地球温暖化

2015年06月27日

 

2020年に電力自給率64%へ、「脱原発都市」を宣言した南相馬市

Keywords:  再生可能エネルギー  エネルギー政策  地方自治体 

 

図:南相馬市
この地図は次の作品の二次的著作物です。
By Lincun Some Rights Reserved.

福島第一原子力発電所の事故によって今なお1万人以上の市民が避難生活を余儀なくされている福島県南相馬市が、全国で初めて「脱原発都市」を世界に向けて宣言しました。節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て、記事を要約し、南相馬市の取り組みについてご紹介します。

南相馬市が2015年3月25日に告示した「脱原発都市宣言」には、強い決意が込められている。


脱原発都市宣言


2011年3月11日、東日本大震災により南相馬市は未曾有の被害を受けた。
さらに東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い6万人を超える市民が避難を余儀なくされ、多くの市民が避難の中で命を落とした。
家族をバラバラにされ、地域がバラバラになり、まちがバラバラにされ、多くの人が放射線への不安を抱いている。
南相馬市はこの世界史的災害に立ち向かい復興しなければならない。
未来を担う子どもたちが夢と希望を持って生活できるようにするためにも、このような原子力災害を二度と起こしてはならない。
そのために南相馬市は原子力エネルギーに依存しないまちづくりを進めることを決めた。
南相馬市はここに世界に向けて脱原発のまちづくりを宣言する。

出典:南相馬市復興企画部
http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/8,23464,75,html


太平洋に面した南相馬市では、東日本大震災によって600人以上にのぼる犠牲者が出た。福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染のために、震災前には7万人だった人口が一時的に1万人以下まで落ち込んだ。2015年3月現在でも、まだ1万人以上の市民が市外で避難生活を送っている。

南相馬市では、震災から約1年半後に3つの基本方針を掲げた。「省エネルギーの推進」「再生可能エネルギーの積極的利用」「スマートコミュニティの構築」である。原子力に依存する状況から脱却するために、2030年に自給率100%を目指して、中間点の2020年に64%まで引き上げるための施策を提示した。

再生可能エネルギーの中心になるのは太陽光と風力である。導入ポテンシャルの20%を発電できれば、2030年の目標値に到達する。南相馬市と東芝が検討を進めているメガソーラー建設計画が実現すれば、年間の発電量は1億kWhを超え、2020年の太陽光発電の目標値の6割以上になる。市の復興整備計画では、農地を太陽光発電に転用する手続きが進み始めている。

写真:太陽光発電所 写真:植物工場
Copyright 一般社団法人福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会 All Rights Reserved.

同じ東芝が出資した、新しいスタイルの農業を目指す「南相馬ソーラー・アグリパーク」は、市有地に発電能力0.5MWの太陽光発電所を建設して2013年3月に稼働。敷地内にはドーム型の植物工場が2棟あって、太陽光発電所の電力を使いながら野菜を栽培している。原子力に依存しない自然のエネルギーを使って、安心して食べられる野菜づくりを実践することで、震災からの復興に向けた農業再生のシンボルに位置づける。

南相馬市は、循環型の「環境未来都市」を実現していく方針だ。再生可能エネルギーを地産地消する環境を整備するのと並行して、30世帯程度の集落を単位にしてスマートコミュニティを形成する。産業面では植物工場を活用して、農産物の生産・加工・販売からエネルギーの供給までを一貫して実施できる循環型の地域産業を創造する計画だ。

放射能汚染の被害を克服して、次世代につながる街づくりに取り組むことが、大震災からの復興になる。その思いが「脱原発都市宣言」の文章で表されている。

この宣言を電力会社や政府はどう受け止めるのか。震災から丸4年が経過して、原子力発電所を再稼働させる動きが着々と進んでいる。南相馬市をはじめ放射能汚染の克服に懸命に取り組む地域の状況に改めて目を向けたうえで、再稼働の是非を考える必要がある。

出典:スマートジャパン

English  

 

 

このページの先頭へ