エネルギー・地球温暖化

2014年10月12日

 

エネルギー自立型建築の日本の動向

Keywords:  省エネ 

 

写真:島田市立六合小学校旧校舎
イメージ画像: Photo by keyaki Some Rights Reserved.

日本でも世界でも、建築物のエネルギー消費量やCO2排出量の削減が大きなテーマとなっており、さまざまな取り組みが進められています。JFSニュースレター8月号では、日本の省エネルギー建築の変遷について、丹羽英治氏の著書『エネルギー自立型建築――持続可能な低炭素都市を支える』(工作舎、2013年)から抜粋してご紹介しました。
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035037.html

今回は、同書から、日本におけるエネルギー自立型建築の動向についてお伝えします。

日本では、2008年の洞爺湖サミットにおける国際エネルギー機関IEAの省エネ勧告等を受け、国の委員会等の場面において、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)に関する調査・研究が本格的に開始されました。その主要な取組み内容を紹介します。

・ZEBの実現と展開に関する研究会(2009年5月~11月、資源エネルギー庁) 「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(nZEB)」の実現と展開に向けて、具体的な道筋を検討するため「ZEBの実現と展開に関する研究会」が立ち上げられました。

建築物ゼロ・エネルギー化ロードマップ

2009年7月のラクイラ・サミットにおけるIEAの日本勧告や、前述の研究会の成果等を受け、「地球温暖化対策に関する中長期ロードマップ(環境省、2010年12月)、「低炭素社会に向けた住まいと住まい方」の推進方策について(経済産業省・国上交通省・環境省、2012年7月)等において、住宅や建築物における将来に向けての省エネルギー化のロードマップが示されました。

この工程表では、2012年以降、公共建築物においてはゼロ・エネルギー化を推進、民間の住宅・建築物においても2030年には平均的にゼロ・エネルギー化を実現することが掲げられています。

これら中長期の工程表が、今後の施策の方向性と併せて示されることは、民間事業者の投資判断材料として、非常に有効なものであったと考えられます。とくに省エネ法の省エネルギー基準の順次強化、届出義務から適合義務への流れが明確に示されたことは、2013年4月の省エネ基準改正と併せ、リアリティを持って一般に受けとめられたと考えられます。

学校のゼロ・エネルギー化推進

学校は使用時間が短く、エネルギー消費密度が低い建物です。延べ床面積当たりの一次エネルギー消費量が小さく、低層であることから、太陽光発電パネル等の大規模な設置も見込めます。学校は、ゼロ・エネルギー化が実現されやすい建築用途であるといえます。

国民に対しての啓発効果も高い学校建築のゼロ・エネルギー化については、率先して推進すべく「学校ゼロ・エネルギー化推進方策検討委員会(2012年1月~5月、文部科学省、国土交通省)」が開催されています。東日本大震災を踏まえた地域防災への貢献、環境教育への貢献等についても整理しています。

ZEB指向建築の現状と今後

米国、欧州、アジア諸国の最先端事例に対して、日本はやや遅れをとっている感はあるものの、ZEB指向建築は、標準的な事務所ビルに対して大幅な省エネルギーを達成しています。

特に、2011年の東日本大震災以後、省エネルギー意識が高まったことにより、エネルギー消費量は減少傾向にあり、ZEB実現の期待も高まってきました。一方で、再生可能エネルギーの導入量は、諸外国に比べて少なく、再生可能エネルギー導入の推進が、今後の日本でZEBを実現させるための鍵となるでしょう。

(編集:枝廣淳子)

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