エネルギー・地球温暖化

2016年08月11日

 

国が打ち出す2つのエネルギー戦略、2030年と2050年の長期目標実現へ

Keywords:  エネルギー政策  再生可能エネルギー  地球温暖化 

 

写真: Agucadoura WindFloat Prototype
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経済産業省と内閣府がエネルギー分野の長期戦略を相次いで発表しました。経済産業省は省エネの推進と再エネの拡大を中心に2030年のエネルギーミックスを実現するための施策をまとめ、内閣府は2050年までに温室効果ガスを大幅に削減する革新的なエネルギー関連技術の研究開発を推進します。節電・蓄電・発電の最新ニュースを発信しているスマートジャパンの許可を得て記事を転載し、「太陽光+水素」による自立型エネルギー供給の取り組みについてご紹介します。

経済産業省が4月18日に「エネルギー革新戦略」を決定した翌日の19日には、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が「エネルギー・環境イノベーション戦略」(NESTI 2050)を策定して総理大臣に答申した。名称だけでは違いがわからないが、前者は2030年に向けたエネルギー政策を広範囲に取りまとめたのに対して、後者は2050年を見据えた革新的なエネルギー関連技術に的を絞った。

経済産業省のエネルギー革新戦略は5本の柱で構成している。徹底した省エネと再エネの拡大に加えて、電力会社に依存しない新たなエネルギーシステムの構築、IoT(モノのインターネット)や水素を活用した新市場の創出、未来の社会を先取りする「福島新エネ社会構想」の実現だ。

特に注目したい点は新市場の創出に向けた4分野の施策である。省エネ政策を抜本的に転換するほか、再生可能エネルギーを含めた低炭素電源の拡大、IoTを活用したネガワット取引の創出、さらに水素社会に向けたサプライチェーンの構築を推進していく。いずれの分野でも2016年度中に新たなルールやシステムの整備に着手する。

エネルギー革新戦略の目的は2030年に設定した温室効果ガスの削減目標を達成することにある。そのために火力発電の比率を引き下げるエネルギーミックス(電源構成)を実現する。ただしエネルギーミックスで20~22%を占める目標の原子力発電に関しては、革新戦略の中でまったく触れていない。原子力発電は革新ではなくて既存の技術とみなしているためなのか、経済産業省の置かれた微妙な立場も垣間見える。

革新的な蓄電池や次世代の太陽光発電

一方の内閣府によるエネルギー・環境イノベーション戦略は文字どおり技術革新(イノベーション)に重点を置いている。AI(人工知能)やIoTを活用したエネルギーシステムの統合技術とシステムを構成する3つのコア技術、さらに7つの分野にわたる革新技術が対象だ。それぞれの技術を組み合わせて、2050年に世界で最先端の超スマート社会「Society 5.0」の実現を目指す。

7つある分野別の革新技術の中には、電気自動車の航続距離を700キロメートル以上に延ばせる革新的な蓄電池をはじめ、CO2を排出しない水素の製造・貯蔵・利用技術、発電効率を現在の2倍に高めた次世代の太陽光発電などが含まれている。

内閣府はエネルギー・環境イノベーション戦略の前段階として、2013年に「環境エネルギー技術革新計画」を策定した。合わせて37項目にわたるエネルギー関連技術のロードマップをまとめている。高効率石炭火力発電から地球観測・気候変動予測まで、2050年に向けた大まかな開発目標を設定した。

同様にエネルギー・環境イノベーション戦略の対象になった革新技術に関してもロードマップを作成して推進していく。この戦略を通じて2050年の温室効果ガスの排出量を現在から半減させる狙いだ。2015年12月にパリで開催したCOP21(国際気候変動枠組み条約第21回締結国会議)では、世界の気温上昇を2℃未満に抑えることで各国が合意した。

2050年までに目標を達成するためには、全世界で年間に300億トン以上の温室効果ガス(CO2換算)を削減する必要がある。このうちエネルギー・環境イノベーション戦略の革新技術を生かすことで、最大100億トン超を全世界で削減できると見込んでいる。実現までに克服すべき課題は数多く残っているが、エネルギー分野の革新技術で日本が世界をリードできる可能性は十分にある。

出典:スマートジャパン

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