幸せ・レジリエンス

2015年01月09日

 

シャッター通りから、にぎわいのスペースへ

Keywords:  定常型社会  市民社会・地域 

 

写真:北高架商店街

日本全国で商店街の衰退が問題となっているなか、全13店舗中9店舗が空き店舗という「シャッター通り」だったのに、2年半で空き店舗はゼロになり、にぎわいを取り戻しつつある小さな商店街が注目を集めています。

大分県のJR別府駅近くの高架下にある「北高架商店街」は、築47年の古い小さな商店街でした。駅の近くとはいえ、ひっそりと高架下に連なるお店に足を運ぶ人はそれほど多くなく、店舗の4分の3が空き店舗という、典型的なシャッター通りでした。

変化のきっかけは、2011年4月に商店街入り口にオープンしたカフェが、店内に作家の芸術作品を展示したり、夜などは別の人に店を貸してカフェバーにするなどして、人の集まる場づくりを始めたこと。そして、地元出身の日名子英明さんが同年8月にブック&レコードショップ「ReNTReC.」を開店したことでした。

新しい店主たちは、管理会社の協力を得て、地元の画家に頼んで、商店街の壁や柱に絵を描いてもらい、それまでのさびれたイメージを明るく変えました。また、毎週土曜日に商店街の通路でフリーマーケット「Slowly Market」をスタート。これまで足を運ばなかった客も引きつけるようになりました。さらに商店街を気に入り、自分の店舗を開店する出店者も出てきました。空き店舗を地元の芸術イベントの会場にしたところ、訪れた人がその空き店舗で雑貨店を開店することになるなど、シャッター通りのシャッターが次々と開いていったのです。

日名子さんは、「商店こそ経済の起爆剤になる」と述べています。「店を持つということは、インターネットで通販をすることじゃない。この近辺の人たちが毎日来て、僕らのお店の売り上げに協力していただく。そのためにこちらは、近所の人が欲しいものを提供するということなんです」。

「別府には11万人ぐらいの人がいます。その11万にのうちの、たとえば「年収がこのくらいの人」とか、「こういうものが欲しい人」という人数が1,000人いたら、その1,000人が1カ月のうちに買いに来てくれたら、商売は成り立つ。1,000人が1,000円ずつ使ってくれれば、100万円ですから、スタッフが2、3人ぐらいの規模だったら、無理をしなければ事業として成り立ちます」。

「レコード屋だからって、レコードだけを売るんじゃない。「レコードを聴く」ということも売れないか。たとえば、「家にいっぱいレコードがあるけど聴けないんだよね」と言う人たちに、「週に1回ぐらいレコード鑑賞会をしませんか。その代わり、お茶の1杯も飲んでいってね」と言って、それでお金を落としてもらうやり方があるかもしれない。お互いに、「お金を落としても損していない」と思っていただける関係をつくることが大事だと思って、今少しずつ、切り替えていこうとしています」。

人口減少と高齢化に直面している日本では今、「地域創生」という言葉や政策が飛び交っています。地域の商店や商店街の新たな考え方や取り組みに注目が集まっています。

写真:北高架商店街

(枝廣淳子)

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