2018年07月04日
Keywords: 環境技術
イメージ画像:Photo by Syed Wali Peeran Some Rights Reserved.
京都大学は2018年3月、同大学とヨルダンのムタ大学による国際研究グループが、砂漠の洪水を収集して貯水池に蓄え灌漑用水に変換するシステムを提案し、そのプロトタイプをヨルダンの乾燥地域に実際に構築し、厳密な数学的根拠に基づく最適戦略によって貯水池の運用を開始したことを発表した。本研究成果は、2018年3月5日に国際学術誌「Stochastic Environmental Research and Risk Assessment」にオンライン掲載された。
海外の過酷な環境に研究目的の農業水利施設を構築する試みはこれまでにもあったが、その運用戦略について厳密な数学的方法論に基づいた検討を行った例としては、本研究が初めてになる。
水資源利用工学と解析学の学際的研究の成果として、厳しい環境下での水資源開発において、本プロトタイプが実現可能な選択肢であることを確認した。特に、ある種の偏微分方程式に対する「粘性解」の概念を用いることにより、ポンプの運転/停止切り替えのような滑らかでない最適運用戦略を取り扱うことが可能となった。
中東や北アフリカをはじめ世界全体に広く分布する乾燥地域においては、外来河川や化石地下水への過度の依存や塩類集積といった問題が顕在化し、過酷な環境の中で限定的な水資源を有効利用する灌漑農業を確立することが喫緊の課題となっている。同時に、このような乾燥地における突発的洪水による被害が拡大していると言われている。そのため、これらに対処するための灌漑システムが求められていた。