ニュースレター

2003年12月01日

 

日本の森林の状況について

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JFS ニュースレター No.15 (2003年11月号)

日本は緑と山の国です。約2,500万ヘクタールの森林があり、国土面積の約67%を占めています。この数字は世界全体平均値29%の倍以上ですが、人口が多いため、一人あたりの森林面積は0.2ヘクタール。総森林面積はこの30年間ほとんど変わっていません。

日本林業調査会の2000年のデータを見ると、日本の森林のうち、約60%が天然林、残りの約40%が人工林です。人工林は、1966年から1995年までの約30年間で30%増加し、約1,000万ヘクタールに達し、天然林は同じ30年間に約15%減少し、1,300万ヘクタールとなっています。

蓄積(樹木の年間成長量をもとに算出したおおよその資源量)は、この30年間で約85%増加しています。特に、人工林は3倍以上に増加して、約1,900百万立方メートル、天然林も約20%増加し、約1,600百万立方メートルです。

日本の人工林のほとんどは針葉樹です。特に戦後に大量に植林されたスギが、人工林蓄積の半分以上で、スギ、ヒノキ、カラマツの3種類で全体の9割近くを占めています。一方、天然林の蓄積の72%は広葉樹が占めており、多様な樹種構成となっています。

日本では「木曾のヒノキ・秋田の杉・青森のひば」を三大美林と呼んでいます。どれも昔から人々が大事に守ってきた森です。木曾のヒノキは、江戸時代には、尾張藩が材木役所を設置して保護しました。「ヒノキ1本、首ひとつ」という言葉が残っていますが、ヒノキを1本切ったら、首をはねられるほど、厳しく守っていたのです。

日本には「里山」という言葉があり、昔から人々はまきをとるなど、「人里近くにあって人々の生活と結びついた山・森林」を大事にしてきました。このような人間生活のかかわりの中でできあがった二次林を里山と呼んでいます。

戦後、日本の森林に大きな変化が出てきました。まず、食料不足で多くの森林が畑に転用されました。また、昭和30年前半に薪や炭から、石炭や石油へと、生活で使う燃料が変わりました。これによって、森と人々とのつながりが薄くなってしまいました。

炭や薪は広葉樹だったので、燃料の転換で使われなくなった広葉樹を切って、針葉樹にかえる拡大造林の政策が採られ、高度成長で用材の需要も増加の一途だったことから、「将来のために多くのスギやヒノキを植えよう」と人工林が4割にまで増えたのです。

このように戦後に造林された人工林の多くは、現在、間伐が必要な時期(20-35年生)にさしかかっています。しかし、林業の採算性が低下していることや、木材産業の低迷の影響で、間伐や主伐(柱などの木材を生産するための伐採)が遅れており、土壌保全や保水・浄水機能などの弱くなった荒れた森林が増えていることが大きな問題となっています。

国土の67%が森林であるにも関わらず、日本で使っている木材の80%は、外国から輸入しています。その大きな理由は、外国産木材の方が安いためだといわれます。日本の山は急斜面が多いので、機械も使いにくく、手入れや切り出し、運搬に手間がかかります。それに比べて、日本の輸入先のアメリカやカナダ、インドネシアなどでは、平地にも森林が広がっているので作業がしやすく、人件費も安いので、木材を安く供給できるのです。この結果、1950年には98%だった木材自給率が1970年には45%に、そして現在は20%を切っています。

国内木材産業の衰退に伴い、40年前は約44万人いた林業従事者も、今は6万7000人にまで減っており、しかも65歳以上の割合も30%を超え、高齢化が進んでいます。

日本は年間に木材を大体1億m3消費しています。主な用途は、柱や天井などの建築用(45%)と紙の原料(40%)です。一人当たりの使用量はアメリカや北欧などに比べると格段に低いのですが、丸太も製紙用のチップも輸入総量は世界一です。

一方、国内の森林の年間成長量は7,000万m3と言われ、森林の蓄積量は毎年5,000万m3増加していることになります。日本は大量に木材を輸入している一方、国内の森林を利用しにくいしくみになっていることが最大の問題となっています。
ちなみに日本は京都議定書で約束した6%削減のうち、3.9%分を森林による吸収で達成しようと計画しているため、森林の保全が大きな緊急課題となってきました。このため政府は、たとえば、森林整備と同時に、雇用効果も期待できるとして「緑の雇用」を進めています。

また、都道府県や市町村でも、地元の木の認証制度をつくったり、補助金をつけて、地元産の木材利用を促進しています。NGOや市民グループなども「地元の木で家をつくる会」を各地で立ち上げて、取り組みを進めています。木材加工の研究開発も進み、日本の木を使った強い合板や家具、文房具も作られています。

日本の山を守るために緊急課題である間伐材の利用もさまざまに工夫されています。政府は、公共工事に国産の間伐材を積極的に使うよう都道府県に通達を出しています。間伐材で作られた内装材、テーブルやイス、鉛筆や割り箸もあり、間伐材マークなどをつけてアピールしています。京都府では、コンクリート製が一般的だった堰(えん)堤部分に間伐材を利用した木製ダムを作りました。また、最近NGOと製紙企業の共同の取り組みで、間伐材紙の封筒や紙もできました。
http://www.japanfs.org/db/336-j

また、国内の森林でFSC(森林管理協議会)の認証を受けるところも増えています。
http://www.japanfs.org/db/326-j

今年の6月には「緑の循環認証会議」という日本独自の認証組織も発足しました。http://www.sgec-eco.org/

ユーザー企業として海外の森林を守る新しい動きとして、リコーはオールドグロス林、原生林、もしくは絶滅危惧種の生物が生息する自然林などからの原料は使わない、という規定を設けました。再生紙使用という基準にとどまっていた紙製品のグリーン購入の取り組みで、原生林の保護にまで踏み込んだ画期的な基準です。
http://www.japanfs.org/db/390-j

森林はエネルギー源としても注目されています。政府が主導する「バイオマス・ニッポン」のプロジェクトのもと、バイオマス・エネルギーの研究・実用化の取り組みも進められています。
http://www.japanfs.org/db/153-j

薪ストーブの復活や、木材として使えない木屑などをペレットにして暖房に使う、または蒸気ボイラーで燃やし、地域暖房や発電をおこなうなどの取り組みが、特に森林県?を中心に広がっています。(JFSのインフォメーションセンターで「バイオマス」で検索していただければいくつかの取り組みが載っています)
http://www.japanfs.org/db/index_j.html

木材利用のみならず、森林の大切さを認識して守ろうという取り組みも日本各地に広がっています。自治体で、森林を守るための税金を設定したり、水道料金に一定料金を上乗せするなどして、水源を涵養する森林の保全活動を進めるところが少しずつ増えてきました。例えば、高知県の森林環境税などがあります。
http://www.japanfs.org/db/196-j

また、「森は海の恋人」というキャッチフレーズで、漁師が毎年植林をする活動もあります。

宮城県の気仙沼では、豊かに育った森から流れ出る水が豊富な海の生物を育むようにと、漁民と山の地区の住民が手を携えて植樹する「森は海の恋人植樹祭」が10年以上も続いています。

この活動を始めた「牡蠣の森を慕う会」の畠山重篤さんは、牡蠣の養殖に長年携わっているなかで、「海がおかしくなってきた」ことを実感し、「海から環境を考える」活動をした結果、漁師の植林運動を始めました。

森と海をつなぐ川の上流から子どもたちを呼んできて、「プランクトンを飲んでみる」経験もさせるそうです。畠山さんいわく、「人間の排出するものはすべて海に来て、植物プランクトンに集約される。そのプランクトンを、プランクトンネットで採取して飲むだけで、子どもたちは自分のこととして、環境を考えるようになる」。

10数年やっていて、流域の人の意識が変わってきて、ウナギやタツノオトシゴも取れるようになり、海の生き物が戻ってきているそうです。いま日本の各地に「海は森の恋人」の植林運動が広がっています。

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