ニュースレター

2016年07月07日

 

"もったいない"を価値へ お財布にも優しい食品ロス削減

Keywords:  ニュースレター  3R・廃棄物  食糧 

 

JFS ニュースレター No.166 (2016年6月号)

KURADASHI.jp ウェブサイト

KURADASHI.jp ウェブサイト

日本では、年間642万トンの食品ロスが発生しているといわれています。2014年に、国連世界食糧計画が人道支援目的で配布した食料が308万トンですから、その2倍の量が廃棄されていることになります。今月号のニュースレターでは、買い物を楽しんでもらいながら食品ロスを削減し、更にはいろいろな社会課題の解決にも繋げていこうという、KURADASHI.jpの取り組みについてお伝えします。

日本における食品ロスの課題

日本では、食品ロスの約半分は、家庭から出ています。これを減らすには、生活者一人ひとりの意識や行動を改善することが必要です。残りの半分は、事業系(食品製造業、卸売業、小売業)の食品ロスです。

図:食品ロスの発生
出典:農林水産省 2015年12月 食品ロス削減に向けての講演資料より

一般流通商品の中には、商品のブランドイメージと市況を守ることが優先されるため、賞味期限までの期間が短い、パッケージにダメージがある、季節商品を入れ替えるなどのさまざまな理由により、通常販売されなくなる商品があります。このような業界の商習慣により、実はまだ食べられる食品が、大量に廃棄されているのです。

KURADASHI.jp ~お得に食品ロス削減

KURADASHI.jpを立ち上げた、グラウクス株式会社の代表取締役・関藤竜也さんは、「世界の状況を見ると、食品ロスはあってはならないこと」と話します。

写真:関藤竜也氏
Copyright グラウクス株式会社
All Rights Reserved.

2020年には、東京オリンピックが開催されます。ロンドンオリンピックの成功もあり、持続可能な社会につなげていくための仕組みづくりにも、世界からの注目が集まります。「この機会を逃さず、食品ロスの課題を民間のビジネスの力で、改善・解決の方向に進めていきたい」と、熱い思いを語ってくれました。

そこで目をつけたのが、事業系の食品ロスです。通常販売されなくなった商品を流通させる仕組みをつくれば、まだ食べられるのに捨てられてしまう"もったいない"食品に価値を与えられるはず。でも、具体的にはどうすれば良いのだろう? 関藤さんが、総合商社で世界の物流の生産管理に携わってきた経験から、たどり着いた答えがKURADASHI.jpの仕組みです。

KURADASHI.jpは、2015年2月27日にオープンした、インターネットショッピングサイトです。販売している商品は、サイトの趣旨に賛同するメーカーが協賛価格で提供。多くは、定価の半額以下で購入することができます。無料の会員登録をすれば、誰でも利用可能です。商品はすべて、通常の流通経路では廃棄されてしまうものなので、売れれば売れるほど、食品ロスが少なくなります。

この仕組みは、JFSの記事でも何度かご紹介している「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)になっていることに、気づかれた方もいらっしゃると思います。

売り手からしてみれば、廃棄する商品を減らすことができるので、廃棄コストの削減になります。安価であるためにお試しで買う人が増え、商品の新たなファン獲得に繋がることも期待できます。また、社会貢献に寄与することで、企業イメージの向上によるファン獲得の可能性もあります。

買い手にとっては、安価に商品を購入できることが大きなメリットです。また、購入することが社会貢献になるので、満足度の向上につながることが期待できます。

世間よしについては、直接的には食品ロスが削減されることが挙げられます。加えて、このあとご紹介する、社会課題の解決に繋がる仕組みも、有意義な効果が期待できます。

社会課題解決に向けて

食品ロスに対して日本では、消費者庁、内閣府、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省が連携し、官民をあげて食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開しています。食品ロスの多さを問題視し、その削減を喫緊の重要課題と位置付け始まったプロジェクトです。

しかし、関藤さんは「国民運動になっていることを知らない国民が多い」と言います。食品ロスに限らず、社会課題そのものに気づいていないこと、気づいても自分にできることが思いつかないことが多いのではないかと、関藤さんは考えています。

「『社会課題の解決につながるような良いことをしましょう』と言われても、日々の生活や仕事に追われ、何もできない人が多いのが現状だと思います。まずは、お得に買い物をすることで、"ついで"に背景にある食品ロスの削減に貢献できることに気づいてもらえれば、というところです」

関藤さんの言葉からは、社会貢献に対する人々の行動を変えていきたい、という想いが伝わってきます。

「他にもいろいろな社会課題があって、それを解決しようとして活動している人たちがいます。それも"ついで"で支援するところから始めて、これは良い活動だなと思ったら直接支援する、というように少しずつ変わっていけばと思っています」

KURADASHI.jp ウェブサイト
KURADASHI.jp ウェブサイト

KURADASHI.jpの社会課題解決に繋がる仕組みとは、具体的にはどのようなものなのか、サイトから「クリームトマトスープ/オニオンスープ」2種×24缶(48缶)を例に見てみましょう。

この商品の定価(参考価格)は12,192円ですが、これをKURADASHI.jpで購入すると5,960円(+送料324円)なので、約半額になります。他の商品も、多くは定価の半額かそれ以下で購入できます。

購入価格には、社会貢献活動を行っている団体への支援金額が含まれています。支援金額は商品ごとに決められており、商品を購入することで、支援金が贈られます。

サイトでは、トップページの冒頭に、購入金額の一部が社会貢献に役立つことが、大きく記載されています。安く買えるから、という動機でサイトにたどり着いた人にも、繰り返し利用するうちに社会貢献を意識させることができます。

KURADASHI.jp ウェブサイト
KURADASHI.jp ウェブサイト

ページをスクロールダウンすると、各商品の概要が記載されています。支援先団体の活動を大きく6つ、海外・環境保護・災害対策・医療・動物保護・社会福祉支援に分類しており、それぞれに対応するアイコンが表示されています。これもまた、社会貢献を意識させる仕掛けですね。

各商品のページに移ると、商品詳細が記載されています。先ほどの「クリームトマトスープ/オニオンスープ」の例では、購入金額の中から180円が支援団体に贈られます。支援金額や設定されている支援団体は、価格の下側に記載されており、自然と目に入るようなデザインになっています。

支援金の贈り先は、購入者が変更できる仕様になっています。贈り先団体の活動内容を参照できるよう、およそ3カ月ごとに更新される活動レポートが掲載されており、各団体のウェブサイトへのリンクも貼られています。

会員ページでは、累計の支援金額に加え、購入者の社会貢献度を示す「キズナポイント」を確認することができます。キズナポイントは、KURADASHI.jpが独自に作成した指標で、購入の状況に応じて増えていきます。

このように、KURADASHI.jpのサイトには、社会貢献を意識させるさまざまな工夫が施されています。最初は、安く買えるからということで利用し始めた購入者が、次第に社会貢献を意識するようになることを期待してのものです。

広がる取り組みの輪

KURADASHI.jpは、Yahoo! JAPANの「リユース! ジャパン プロジェクト」にも参加しています。これは、リユースアクションをみんなで広げていくプロジェクトです。個人、企業や団体、行政が一緒になって、「リユースがあたりまえのライフスタイルを広める」ことで、モノや資源が循環する社会に変えていこうとしています。

こちらは、KURADASHI.jpの商品を、インターネットオークションサービスであるヤフオク!のプラットフォームを介して提供するものです。1商品あたり50円がYahoo!基金に寄付され、災害被災者および災害被災地への支援に利用されます。

また、NPOと連携するプロジェクトも動き出そうとしています。2016年5月13日に、NPO法人フードバンク山梨の「フードバンクこども支援プロジェクト」が、新たに支援先に加わりました。

フードバンク山梨は、「食のセーフティネット事業」により生活に困窮する世帯に食料支援を行っています。「フードバンクこども支援プロジェクト」では、夏休みに入ると給食を食べられなくなることから、8月の毎週、集中的に子どものいる支援世帯に向けて食品を配送します。

KURADASHI.jpの取り組みは、徐々に広がりを見せてきています。Yahoo! JAPAN(ヤフオク!)やフードバンク山梨との連携を含め、今後の動きから目が離せません。

〈参考〉
KURADASHI.jp

スタッフライター 田辺伸広

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