ニュースレター

2015年03月09日

 

化粧品の開発 動物実験廃止に向けて

Keywords:  ニュースレター  生態系・生物多様性 

 

JFS ニュースレター No.150 (2015年2月号)

写真:『大丸化粧品店』店内
イメージ画像: Photo by ict.wa4 Some Rights Reserved.

化粧品の開発において、さまざまな動物実験が行われていることはご存じでしょうか? EUなどでの動物実験禁止の動きにつづいて、日本でも動物実験を廃止する大手化粧品企業が出てきています。国内で動物実験問題に取り組む3つの動物保護団体が合同で、「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」を立ち上げ、シンポジウム開催や企業への働きかけなどの運動を行い、化粧品の動物実験をなくしていこうという運動を展開しています。同実行委員会の取り組みと、日本企業の動向をお伝えします。

「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」は、化粧品の動物実験にかかわらず、動物の犠牲を伴わない真の美しさの実現に向けて、さまざまな提案をしていくため、2013年1月に、以下の3団体が集まって立ち上げたものです。

  • ARC(NPO法人アニマルライツセンター)
  • JAVA(NPO法人動物実験の廃止を求める会)
  • PEACE(Put an End to Animal Cruelty and Exploitation)

同実行委員会のウェブサイトでは、化粧品開発のための動物実験について、次のように紹介しています。

「美しさ」を追求するツールである化粧品の開発のために、これまで、世界中でウサギやモルモットなどを使った動物実験が行われてきました。

「動物がかわいそう」「動物実験した化粧品を使いたくない」という消費者の声が高まった結果、EUでは化粧品開発のための動物実験を2004年から段階的に禁止し、2013年3月11日に一部例外とされていた試験についても最終的に完全に禁止されました。続いてインドでも化粧品の動物実験が禁止となるなど、その他の国でも禁止に向けて動いています。

化粧品の開発で、どのような動物実験が行われているのでしょうか?

日本では、全ての化粧品に動物実験が法律で義務付けられているわけではなく、化粧品の安全性保証は、企業が自己責任のもとに行うこととなっており、承認申請の仕組みもありません。動物実験が要求されるのは、(1)新しく開発したタール色素、紫外線防止剤、防腐剤を配合するとき、(2)配合量が規制されている成分について、もっと量をふやしたいときなどで、企業などが独自に行う研究・開発のためにも動物が犠牲になっています。

化粧品の開発時におこなわれる動物実験としては、化学物質の毒性をはかるためにあらかじめ絶食させておいた動物の口から強制的に試験物質を投与したうえ、中毒症状を2週間観察し、実験後は生死に関わらず解剖される「単回投与毒性試験」、皮膚に対して化学物質がアレルギーを引き起こすかどうかをはかる試験で、試験物質を背中の皮膚に注射して引き起こされる炎症を観察する「皮膚感作性試験」、さらに皮膚への試験物質注射や塗布をした箇所に紫外線照射を数日間繰り返す「光感作性試験」などがあります。

また、ウサギの片方の目に試験物質を点眼し、その刺激を観察する「眼刺激性試験」では、目を手足でこすらないよう保定器に拘束された状態で96時間の経過をみます。ウサギは涙腺が細く、涙が出にくい特性から試験物質を角膜上に保持しやすく、また鳴き声をあげないために多く用いられています。ウサギが激痛を感じている様子がある場合は、直ちに殺処分されます。しかしながら一方で、この実験は研究結果にバラつきが多く、人間のまぶたや角膜、涙の量とは異なるウサギでテストすることは信頼性に欠けるとも言われています。

動物実験への反対の声が大きくなり、EU域内では、2009年から化粧品のための動物実験の実施が禁止されており、また、動物実験された原料を使った化粧品の取引も同時に禁止され、輸入もできなくなっています。2013年には適用除外とされていた一部の動物実験を行ったものについても取引禁止が施行され、完全禁止が実現しています。インドでも化粧品の動物実験が禁止となるなど、その他の国でも禁止に向けて動いています。

日本国内でも、昨今の動物愛護の世論の高まりを受けて、化粧品メーカー最大手の資生堂が2011年3月に自社の動物実験施設を閉鎖し、2013年3月には、外部への委託も含めて化粧品開発のための動物実験を全廃し、マンダムもその後に続きました。

「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」は、日本における化粧品・医薬部外品の動物実験の全廃を目指し、立ち上がったものです。

2014年8月には、オンライン署名プラットフォームChange.orgで展開されていた「コーセーさん、動物実験を廃止してください!」という署名キャンペーンと連携し、9月10日には、集まった23,760人分の署名をコーセーに届けました。これまでコーセーは、動物実験の廃止に比較的前向きな姿勢を示してきましたが「廃止した」という確たる情報は得られていませんでした。

署名の提出には、品質保証を担当する取締役、経営企画部長兼広報室長、広報室課長の3名が対応し、化粧品・医薬部外品の動物実験の全廃要望に対して、「2013年上期から、化粧品・医薬部外品の動物実験は廃止しており、今後も行わない方針である」ことを明らかにしました。

同実行委員会はまた、2014年11月12日付で、ポーラやオルビス、オーガニックコスメのジュリーク、H2Oなど多数のコスメブランドをもつポーラ・オルビスグループに、「グループ全体として、化粧品・医薬部外品の動物実験を廃止してほしい」と要望すべく、面会を申し入れ、12月26日に面会が実現しました。

面会には、ポーラ・オルビスホールディングスの広報・CSR管掌取締役、ポーラの品質保証管掌取締役をはじめ5名が参加し、同委員会の要望に対して、「2015年1月1日から開発に着手する化粧品・医薬部外品について動物実験を廃止します」という回答が得られました。同社のウェブサイトでも「化粧品(医薬部外品を含む)の研究・開発において、代替法技術の確立に伴い外部委託を含めて動物実験を行わない」との方針が公表されています。

ところで、化粧品の開発に動物実験は必須ではありません。創業してから一度も動物実験をおこなっていないメーカーもあるのです。化粧品専門店「ザ・ボディショップ」「ラッシュ」等は、創業時より、化粧品製造の過程で動物実験を一切おこなっていません。

一度も動物実験をおこなったことのないメーカーが実存し、日本でも大手企業が続々と動物実験廃止を決断・宣言していることを同実行委員会は大きく評価し、「いまだに動物実験をおこなっている大手メーカーに対して『一刻も早く動物実験を廃止して!』との声を届けてください」と呼びかけています。

メーカーが動物実験を繰り返すのは、化粧品開発・製造のためにたくさんの動物が犠牲になっていることを知らない消費者が多いことにも起因しているとして、同実行委員会の立ち上げ団体のひとつでもあるJAVAでは、「この事実をあなたの周りの人に知らせてください」と呼びかけています。

「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」では、これからもシンポジウムの開催など、さまざまな取り組みをおこなっていくとしています。

スタッフライター 飯島和子、枝廣淳子

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