ニュースレター

2013年03月12日

 

日本のエネルギー永続地帯――地域別の自然エネルギー供給状況

Keywords:  ニュースレター  再生可能エネルギー 

 

JFS ニュースレター No.126 (2013年2月号)

http://sustainable-zone.org/


国内のエネルギー供給に占める自然エネルギーの割合は、日本では4%程度しかありません。そこで、都道府県や市町村別など地域ごとに評価することで、自然エネルギーの供給割合が大きな地域を見出し、自然エネルギーにより持続可能な地域を将来にわたって増やしていくことが重要です。

52市町村が自然エネルギー100%を達成

千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所(ISEP)の共同研究「永続地帯研究会」では、2007年から毎年、日本国内の地域別の自然エネルギー供給の現状と推移を明らかにしています。地域における自然エネルギーの割合が、その地域の持続可能性の指標として有効になると考えたからです。

地域特性に応じて、太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマスなど、さまざまな自然エネルギーを活用した実績を指標として評価することにより、これまでGDPなどの経済指標ではとらえられなかった地域の持続可能性を評価し、より発展させることが可能となります。ここでは、2012年12月末に発表された最新の「永続地帯2012年版報告書」のデータをもとに、地域別の自然エネルギーの供給割合から各地域の特徴や持続可能性を考えてみたいと思います。

都道府県別にみると、2011年3月末時点で推計した地域別の自然エネルギーの供給量から、大分県、富山県、秋田県など11県で、民生および農水部門の電力需要と比較した自然エネルギー供給の割合が10%を超えています。

JFS/Tracking Sustainable Energy Zones in Japan: Status of Renewable Energy Supply in Municipalities


都道府県ごとに特徴があり、大分県では地熱発電が大きな割合を占めています。水資源の豊富な富山県では小水力発電が多く、秋田県では地熱発電や小水力発電に加えて風力発電が盛んです。

また、電力と熱を合わせたエネルギー需要に対する自然エネルギー供給の割合が、8県で10%以上となっていますが、全国的に普及している太陽熱以外に、温泉熱などの地熱利用や木質バイオマスの熱利用が各地域で行われています。

JFS/Tracking Sustainable Energy Zones in Japan: Status of Renewable Energy Supply in Municipalities


さらに、全国の52の市町村においては、自然エネルギー供給の割合が100%を超えていることが推計されました。そうした地域では、すでに設置されている地熱発電、小水力発電や風力発電の発電所で生まれた電力を、地域外にも供給しています。

一方、東京都や大阪府など大都市では、エネルギーを大量に消費しているため、太陽光発電や太陽熱利用がある程度進んでいるにもかかわらず、自然エネルギー供給の割合が1%以下と非常に小さいことが特徴です。しかしながら、単位面積あたりの自然エネルギーの供給量では神奈川県が全国で最も大きくなっています。その背景には、限られた土地を有効活用する必要があるという都市部特有の傾向があります。そのため、都市部で自然エネルギーの供給割合を増やすためには、自然エネルギーが豊富で、供給が可能な地域との連携が不可欠となっていることもわかります。


求められる統計整備

エネルギー永続地帯の試算では、エネルギーの需要量と自然エネルギーの供給量を地域ごとに推計しています。今回の報告書では、2010年度のデータを対象にしていますが、太陽光発電のデータだけを見ても、業界団体などから公表されている統計データだけでは、地域別の設備導入状況や供給量を推計することには多くの困難を伴いました。

例えば地域別の住宅用太陽光発電設備の導入量は、2009年にスタートした限定的な固定価格買取制度により、各電力会社が導入データを管理しており、公表されていません。また、発電量については、余剰分のみを買い取る仕組みであるために、自家消費を含む全ての供給量は把握されていません。ISEPが毎年発行している「自然エネルギー白書」においても、発電設備の容量から自家消費分を含む発電量を推計しなければなりません。海外では2000年から買取制度がスタートしたドイツのように、環境省の元に自然エネルギー統計の整備機関が設けられ、毎年、詳細なデータを公表している国もあります。

2012年7月に導入された事業用太陽光発電や風力発電などの全量全種の固定価格買取制度により、今後、さまざまな自然エネルギーの統計データが整備され、公表されることが期待されます。このエネルギー永続地帯の指標をさらに有効なものにし、各地域での自然エネルギー導入の成果を評価できるように、自然エネルギー統計の整備はとても重要な課題です。


認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
松原弘直

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