2004年05月01日
Keywords: ニュースレター
JFS ニュースレター No.20 (2004年4月号)
日本では、環境に配慮した製品・サービスを優先的に購入して、環境負荷の高い製品から環境負荷の少ない製品へ需要を転換しようという「グリーン購入」「グリーン調達」の動きがここ数年とても盛んになってきました。
2000年4月に「グリーン購入法」が定められ、国等の公共部門が環境負荷の低減に資する物品・役務の調達を推進することが決められました。地方自治体に対しても「努力義務」を定め、多くの自治体や企業が独自のグリーン購入の基準を設けるなどして、グリーン購入を進めています。
地方自治体のグリーン購入の取り組み調査結果はこちらにあります。
http://www.japanfs.org/db/521-j
企業などの取り組みについて。
http://www.japanfs.org/db/218-j
2002年12月号のJFSニュースレターの「広がり深まるグリーン購入・グリーン調達の動き」のなかにも、自治体や企業の取り組み事例が挙げられています。
http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027216.html
グリーン購入法では、調達方針の作成や調達方針に基づく物品の調達推進、調達実績の取りまとめや公表が義務づけられています。これにもとづき、環境省は平成14年度の調達実績を公表しました。
「国のグリーン調達、14年度に大半の品目で95%達成」
http://www.japanfs.org/db/576-j
2004年3月のグリーン購入法の基本方針の見直しでは、23品目が追加されました。
主な変更内容は「植物由来プラスチックを使用した品目の拡大」「省エネルギー性に配慮した給湯器等の追加」「ノンフロン冷蔵庫の追加」「リサイクル部品を使用した自動車整備」などです。このように、定めた品目の調達実績を確認しつつ、新たな品目を追加していき、グリーン購入の深化・拡大をはかっています。
国及び地方自治体は、日本の約4分の1の経済活動を行い、他の主体にも大きな影響力を有しているため、グリーン購入を率先して推進することによって、需要の転換や大きな波及効果を市場にもたらすことが期待されています。
グリーン購入法という法的側面のほかに、日本のグリーン購入・調達を大きく促進しているのは、関心を寄せる企業や行政、消費者団体などが集まって1996年2月に結成された「グリーン購入ネットワーク(GPN)」です。
http://www.gpn.jp/
自治体や企業のグリーン購入の取り組みも、当初取りかかりやすい紙・事務用品などの取り組みから、部品や原材料のグリーン調達、配送のグリーン化などにも広がりが出てきています。たとえば→
神戸市、グリーン配送を導入
http://www.japanfs.org/db/483-j
先進的な企業では、製品本体のグリーン化だけではなく、川上から川下まで含めたサプライチェーンのグリーン化をはかろうとする動きや、消費者への意識啓発も兼ねての取り組みなども出てきています。たとえば→
滋賀銀行、ノベルティ・グッズもグリーンに
http://www.japanfs.org/db/277-j
また、GPNが、2003年に実施した第8回グリーン購入アンケート調査によると、製品購入時に取引先の環境への取り組みを考慮している団体は、昨年の39%から63%に急増しています。第7回アンケート結果(2002年)によると、評価基準には「ISO14001認証取得」などのほか、「グリーン購入の取り組み」を上げている企業も50%以上あり、取引先に対してグリーン購入を求めることによって、サプライチェーン全体のグリーン化をはかる動きが見られます。
GPNでは、これからグリーン購入をおこなおうという企業や自治体に対して、「グリーン購入取り組みガイダンス」をホームページ上に掲載しています。
組織的なグリーン購入のポイントとして、
・方針を立てる
・体制をつくる
・商品の選び方を決める
・取引先と連携する
・社員・職員の意識を高める
・活動を見直す
というグリーン購入実施の流れと留意点を解説。
また、「今すぐグリーン購入を始めるポイント」として、
・取り組みやすい商品からはじめる
・わかりやすい情報を基準にする
・一つの部署から広げる
・実績を把握し、経験をまとめる
などのポイントを挙げています。
また、GPNの地域ネットワークである滋賀グリーン購入ネットワークのホームページには「グリーン購入自己診断システム」もあります。
これは、グリーン購入の取り組み状況を、自己チェックするもので、定期的にチェックすることで、取り組みの進捗状況を把握し、今後どんなことに取り組めばよいか、新たな目標設定の参考にするものです。また、他団体の取り組み状況との相対比較もできます。
このように、政府、自治体、企業でのグリーン購入の動きはかなりのスピードで広がり、つづいています。今後は、取り組み品目の増大や調達率の増加のみならず、とりわけ多国籍企業での「海外の拠点も含めての取り組み」「海外のサプライヤーも含めてのサプライチェーンのグリーン化」などの動きに注目したいと思っています。
一方、一般の消費者への啓発や取り組み促進の必要性がますます重要になってきています。いくら企業が環境配慮型製品を作っても、消費者が購入しないかぎり、環境負荷を減らすことはできませんし、企業が環境配慮型製品を作り続けようという意欲と投資を支援することもできないからです。
JFS理事でもある東京大学の山本良一先生は、「トヨタの全販売台数に占める低公害車の割合は1.4%に過ぎない。ミサワホームのソーラー発電を組み込んだゼロエネルギー住宅の全販売件数に占める割合は0.5%、西友のエコ商品の全売上高に占める比率は2%しかない。これらの割合をどうやって引きあげていくかが大きな課題だ」と述べています。
ある組織の中だけの自己完結型のグリーン購入から、サプライチェーンや消費者、また国境を超えてのつながりの中で、さまざまな当事者のグリーン化を促進していくアプローチとしてのグリーン購入へ、日本のグリーン購入の取り組みは大きく進化しているところといえるでしょう。
この秋には、第1回グリーン購入世界会議が仙台で開かれます。これは、グリーン購入に関する初の国際会議で、「グリーン購入仙台宣言」など今後の世界的なグリーン購入の指針となり得るメッセージを日本から発信し、日本からグリーン購入の大きな波を世界に起こそう、というものです。
世界をリードしている日本のグリーン購入に関する取り組みを紹介し、世界のグリーン購入に関する最新情報や経験を共有することで、国内外のグリーン購入関係者による国際的なネットワークを構築することをめざしています。また、グリーン購入の市民行動を促す基本的な原則として「仙台市民行動憲章」も発表する予定です。
この会議が、日本の取り組みをさらに進める機会になるとともに、日本から世界への大きな発信の場となり、グリーン購入のうねりが世界に広がる原動力となることを期待しています。
(枝廣淳子)