ニュースレター

2004年02月01日

 

日本の生ごみ事情

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JFS ニュースレター No.17 (2004年1月号)

日本では、年間約4億トンの産業廃棄物と約5000万トンの一般廃棄物が出ています。主に家庭から出る一般廃棄物のうち、約2000万トンが「生ごみ」と呼ばれる食品廃棄物です。この重量は、古新聞紙の6倍近く、廃棄される自動車の4倍近くもあります。

この約2000万トンの食品廃棄物のうち、「製造段階」で出るものが約18%、流通やレストランなどの事業系から出るものが約30%。残りの52%が、家庭から出される生ごみです。つまり、日本の家庭から、年間約1000万トンの生ごみが出ている計算になります。これは日本で一年間に食べている主食のおコメと同じ量です。

では、生ごみのうち、どのくらいがリサイクルされているのでしょうか? たとえば、豆腐を作るときに残るおからは豚の飼料にするなど、製造段階から出る生ごみは、48%がリサイクルされています。

ところが、スーパーでの売れ残り、賞味期限切れのコンビニ弁当やハンバーガーといった流通段階で出る生ごみと、家庭から出る料理クズや食べ残しの生ごみはほとんどリサイクルされずに、焼却・埋立処分されているのが現状です。

平成13年1月に施行された「循環型社会形成推進基本法」のもと、同年6月に「食品リサイクル法」が施行されました。食品製造業者やレストランなどから排出される食品廃棄物の発生抑制や飼料化・堆肥化などの再利用を促進しようとするものです。

この法律の施行も追い風となって、食品製造業者やレストランなどで、生ごみを堆肥化するなどの取り組みが広がっています。たとえば、東京都内にあるホテル・ニューオータニでは、かつては業者に委託して処理していました宴会場の食べ残しや結婚式での生花などの生ごみを、地下に設置した生ごみコンポスト施設で自家処理するようになりました。

できた堆肥は、契約農家が使って野菜を栽培し、その野菜をホテルが購入する、という循環ができています。廃棄物処理業者への支払いがなくなったため、コンポスト施設を入れるための投資は約3年で回収できたと言います。このように、生産者-消費者をつないで循環を作る取り組みが各地に出てきています。

また、スーパーのチェーンである西友では、発注の精度を高めて、無駄なものを注文しないようにし、売れ残りも、賞味期限内のものは「エコ得商品」として従業員に販売するなどの努力で、売れ残り食品を一年間で約18%も削減しました。

生ごみ削減のみならず、コストも削減できたことでしょう。廃棄物処理場が逼迫していて、処理費用が年々高騰している日本においては、このような廃棄物削減の取り組みは、経費節約にもつながるので、多くの企業や工場などで熱心に取り組みを進めています。たとえば→

西武百貨店、生ゴミをリサイクル
http://www.japanfs.org/db/9-j

ファミリーマート、個店設置型「電子レンジ式生ゴミ処理機」を導入
http://www.japanfs.org/db/224-j

同一車両で、食材配送と野菜屑回収
http://www.japanfs.org/db/232-j


ただ、食糧自給率がカロリーベースで40%である日本では、堆肥化する取り組みだけでは、食品ごみに対応することはできません。そのような背景もあって、生ごみを同じく自給率が約20%と低いことが問題となっているエネルギーに変える取り組みも広がっています。

たとえば、大型ショッピングセンターで、スーパーの食品売場やレストランから出る生ごみを、バイオリアクターというタンクに入れ、メタンガスを発生させ、ボイラーで給湯などに使っているところが何ヶ所かあります。

また、このように生ごみから取り出したメタンガスを、燃料電池を使って電力に変えている施設もあります。たとえば、神戸市のポートアイランド地区には、日本初の「生ごみバイオガス化燃料電池発電施設」があります。神戸市内のホテルから生ごみを分別回収し、施設に投入し発酵させることよりメタンガスを発生させ、燃料電池を用いて発電をしています。

神戸の「生ごみバイオガス化燃料電池発電施設」 
http://www.japanfs.org/db/89-j

現在、多くの自治体や商業施設で、生ごみをメタンガスに変え、ボイラー燃料やガス発電用に使っています。今後も取り組みが増えるでしょう。
http://www.env.go.jp/recycle/food/ref05.pdf

環境省、生ゴミ利用燃料電池発電システム事業を実施
http://www.japanfs.org/db/314-j

最後に「消費段階」、つまり家庭の台所から出る生ごみのリサイクルはどのような取り組みがあるでしょうか。2003年3月号に記事を掲載した宮崎県の綾町(人口約7600人)では、自治体として生ごみの回収をしています。

回収料として、一般家庭は月に100円、商店は200円払います。回収した生ごみは堆肥にして、地元の農家が使います。農家の作った作物を町の人が食べます。食べるときの生ごみは回収して......と地域でぐるぐると循環しています。生ごみ削減と食糧自給率向上の両方に役立つ一石二鳥の取り組みです。

ほかにも、山形県長井市や岩手県紫波町でも、地域の家庭や事業者から出る生ごみを堆肥化し、それを使って有機農産物を生産し、「域産域消」(地域で作り、地域で消費する)を進めています。

また、札幌市では、ダンボール箱を使った生ごみ堆肥化を市民にPRして、自宅での堆肥化を進めています。みかん箱などのダンボール箱と、園芸店で購入できる土壌改良剤、シャベルや温度計、はかりがあれば、すぐに始められます。

ミミズを使ったコンポストをおこなう人や、電気式の家庭用生ごみ処理機、電気を使わずに手でかき回す方式の生ごみ処理機を利用する人も増えています。

"ミミズコンポストインストラクター"募集
http://www.japanfs.org/db/242-j

また、「そもそも台所で出る生ごみを最小限にする」ために、野菜の皮なども無駄なく使う「エコクッキング」も広がっています。エコクッキングのガイドブックが発行されたり、講習会も開催されています。また、小中学校での環境教育の一環としてエコクッキングに取り組んでいるところもあります。

処理場の逼迫している日本では、「環境問題」といえば、まっさきに「ごみ問題」を思い浮かべる人が多いほど、ごみ問題への意識が高いのですが、これまで、特に家庭からのごみの削減とリサイクルについては、それほど取り組みが進んできたわけではありません。

ごみ重量で大きな部分を占めている生ごみに対する取り組みは、法律整備や処理場の逼迫などを背景に、日本の食糧自給率やエネルギー自給率の向上や、あちこちで広がっている地産地消の取り組みとも連動して、今後もっと進んでいくであろうと思われます。今後の展開や新しい取り組みなど、ぜひJFSの情報データベースで最新の情報をご覧下さい。

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