ニュースレター

2016年07月19日

 

持続可能な東京オリンピック・パラリンピックをめざして

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JFS ニュースレター No.166 (2016年6月号)

写真: Tokyo Tower Special Lightup
イメージ画像: Photo by t-mizo Some Rights Reserved.

2020年、東京でオリンピック・パラリンピック開催へ

2020年のオリンピック・パラリンピックは東京で開催されます。東京での開催は1964年以来56年ぶり。1964年の東京オリンピックのときと同じく、多くの人が日本での開催を心待ちにしていますが、同じ東京開催でも、2020年大会は1964年時には注目されていなかった側面が重視される大会となります。それは「持続可能性」の側面です。

オリンピックはどの場所で開催されても"スポーツの祭典"であることは変わりませんが、「地球にとってどのようなオリンピックなのか」は、オリンピックの開催地がどのように考え、準備し、運営するかによって、大きく異なってきます。

かつて、地球環境問題が大きな社会的な問題になる前は、オリンピックと環境問題・持続可能性が結びつけられることはありませんでした。しかし、温暖化をはじめとする環境問題が大きくなるにつれ、その規模や影響力の大きさから、オリンピック開催方法への社会の視線が厳しくなってきました。

「持続可能なオリンピック」をはじめて大きく打ち出したのは、2012年のロンドン五輪でした。「近代五輪史上、最も持続可能な大会」を目指し、「地球1個分のオリンピック」というテーマを設定し、この目的を実現するために、2007年には五輪史上初の独立の監視委員会「持続可能なロンドン2012委員会」を設置したのです。

オリンピック・パラリンピックの環境影響を考えると、会期中の運営だけではなく、会場などの設営・建設、さまざまな物品の調達などの基準が非常に重要になってきます。ロンドン五輪では、厳密で包括的な調達基準(LOCOG SustainableSourcing Code)を設定し、環境面・社会面に配慮した製品とサービスを用いるようにしました。たとえば、会場の建設に用いる木材や大会で使用する紙はすべてFSC認証を取得したものとし、会場や選手村で提供される飲食品はフェアトレード、有機栽培、持続可能な生産などの認証を取得したものとしました。

さて、では日本で開催される2020年のオリンピックはどうでしょうか? ロンドン五輪が大きく打ち出した方向性や成果をさらに超えることを期待されているのは間違いありません。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会「街づくり・持続可能性委員会」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の中には、いくつかの専門員会が設置されており、そのうちの1つが「街づくり・持続可能性委員会」です。私もその委員の1人です。ほかには、「アスリート委員会」「文化・教育委員会」「経済・テクノロジー委員会」「メディア委員会」があります。

組織図
https://tokyo2020.jp/jp/organising-committee/structure/

組織委員会のウエブサイトには、「持続可能性」というコーナーが設けられています。

持続可能性
https://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/

オリンピック・パラリンピック競技大会は、世界最大規模のスポーツイベントであり、その開催はスポーツの分野だけでなく、社会経済等、多岐に渡る影響を及ぼす一大事業です。また、その影響は、開催都市である東京のみならず、日本全体、さらには世界にまで広く及ぶものです。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、東京2020大会を持続可能な大会とするため、「持続可能性に配慮した運営計画」を策定し、活動を推進していきます。

ここには、持続可能性に配慮した運営計画の策定にあたり、大会運営における持続可能性の基本的な考え方や目指すべき方向等、今後計画の具体的な内容を検討していくための道筋や論点を示したものとして、「持続可能性に配慮した運営計画 フレームワーク」が掲載されています。
https://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/data/sus-plan-JP.pdf

持続可能性に配慮した調達基準の設定に向けて

重要なポイントとなってくる調達については、「経済合理性のみならず、公平・公正性等に配慮して、大会開催のために真に必要な物品やサービスを調達していくと共に、持続可能性を十分に考慮した調達を行うためのもので、具体的な持続可能性に配慮した調達コードを検討していくための原則を示すもの」として、「持続可能性に配慮した調達コード 基本原則」が掲載されています。
https://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/data/sus-principles-JP.pdf

先述したように、調達基準は東京オリンピック・パラリンピックの環境負荷を大きく左右するだけではなく、今後の日本企業の環境配慮にとっても大きな影響を与えるものになるでしょう。

現時点では、調達に関する基本原則が発表されているだけです。

<4つの原則>

  1. どのように供給されているのかを重視する
  2. どこから採り、何を使って作られているのかを重視する
  3. サプライチェーンへの働きかけを重視する
  4. 資源の有効活用を重視する

今後、具体的な調達品目ごとに調達基準が定められていくことになります。省エネや再エネなどの温暖化対策やその他の環境対策の面で、十分に高い基準を目指そうとしているか? 木材調達など、途上国の環境・社会的側面に十分配慮しているか?――しっかりした調達基準が策定されることを願っています。

この調達基準については、「街づくり・持続可能性委員会」の下に設置されている「持続可能な調達ワーキンググループ」が担当してたたき台を作っています(私は調達ワーキンググループのメンバーではないので、具体的な議論には参加していませんが、しっかりウォッチしていきたいと思います)。

私自身は「低炭素ワーキンググループ」のメンバーで、他の4人の委員とともに、大会をいかに低炭素化できるか、さまざまな観点から議論を進めています。このワーキンググループの位置づけはこのように説明されています。

「2014年11月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第5次評価報告書の指摘や、2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)のパリ協定の採択といった国際的な潮流があります。東京2020大会においても、気候変動問題について配慮し、ローカーボン化に取組む必要があり、組織委員会では、より具体的な検討を行う『低炭素ワーキンググループ』を設け、東京2020大会の低炭素に関する事項の検討を進めています」。

低炭素ワーキンググループ
https://tokyo2020.jp/jp/games/sustainability/low-carbon-wg/

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の外でも、「東京オリンピックを持続可能なものに!」という呼びかけや働きかけがさまざまに行われています。私も設立発起人に名を連ねている日本エシカル推進協議会(JEI)では、2020年東京オリンピック・パラリンピックを環境のみならず社会面にも十分に配慮したエシカル(倫理的)なもの、すなわちエシカル・オリンピック・パラリンピックにすることを提言しています。
http://ethicaljp.com/blog/2015/03/31/19

エシカル五輪への提案
http://ethicaljp.com/blog/2015/03/31/19#a3

JEIではエシカル・オリンピック・パラリンピックに相応しい調達基準とガイドラインに含めるべきと考える「エシカル調達ガイドライン配慮項目リスト」をとりまとめて策定し、世に問うています。
https://drive.google.com/file/d/0B_zLph_pU4bYWG9NdFgydkplX00/view

持続可能性に配慮した調達基準の設定に向けて

2020年に日本で開催されるオリンピック・パラリンピックが、日本と世界の持続可能性を損なうのではなく強化しながら準備・運営されるように、持続可能性という観点からもあとに続く人々や組織、街づくりなどにとってのお手本となるように、オリンピック・パラリンピック後の日本や世界の持続可能性に資するものになるように――ぜひ今後の展開をしっかりと見守ってください。持続可能な調達基準や運営に関しての展開等ありましたら、またお伝えしたいと思います。

〈JFS関連記事〉
2020年の東京五輪を"三方よし"の「エシカル五輪」に
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035058.html

写真
イメージ画像: Photo by はらおち

枝廣淳子

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