2014年10月06日
Keywords: 企業活動
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これまで年金や金融機関など、日本の機関投資家は「物言わぬ株主」「眠れる株主」と言われてきました。取引関係のある企業同士で株式を保有するなど、業績が悪化しても関与せず、黙って経営を支持する時代が続いていたのです。この状況が大きく変わり始めました。
金融庁は2014年2月に「日本版スチュワードシップ・コード」を定め、機関投資家に導入を促しています。これは、企業の株式を保有する機関投資家向けに定められた行動規範で、2010年に導入された英国を参考に、設定されました。
「日本版スチュワードシップ・コード」では、「スチュワードシップ責任」を、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任と定義しています。
その上で、機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」としてスチュワードシップ責任を果たすために有用と考えられる7つの原則を定めました。「このコードに沿って、機関投資家が適切にスチュワードシップ責任を果たすことは、経済全体の成長にもつながる」としています。7つの原則は以下の通りです。
このコードに法的な強制力はありませんが、金融庁は導入を表明した投資家を3カ月毎に公表することで、普及をはかっています。コードの設定から3カ月後の2014年5月末時点では127、さらに3カ月後の8月末時点では160の機関投資家が導入を表明しています。
その中でも最大の機関投資家は、約130兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。民間でも大手生命保険会社や信託銀各行が足並みをそろえて受け入れを表明しています。これまで投資先企業の株主総会での議決権行使については運用会社に任せていたり、その方針を開示していない機関投資家が多かったのですが、今後は議決権行使の指針などをつくったりその基準を厳しくするなど、投資先の経営を監視する機能を強めていくことになります。
日本では、世界に比べてSRI(社会的責任投資)が低調ですが、これも機関投資家の積極的な関与がないことがその理由として挙げられています。「物言う株主」の力が、持続可能性へのお金の流れを後押しすることにもつながることを期待しています。
(枝廣淳子)