ニュースレター

2014年02月11日

 

日本企業のCSR情報を世界に伝えるために

Keywords:  ニュースレター  エコ・ソーシャルビジネス 

 

JFS ニュースレター No.137 (2014年1月号)

globe イメージ画像: Photo by *ami.

JFSでは、日本の企業のサステナビリティへの取り組みやその実績を世界に伝える活動の一環として、法人会員・情報発信パートナー企業の英語版CSR報告書のポータルコーナーを設けたり、効果的な海外発信の助言を提供するなどの活動も行っています。 http://www.japanfs.org/en/supporter/csr-reports.html

今回「実際に日本のCSR情報は海外に伝わっているのか?」という問題意識から、日本企業の英語版CSR報告書が世界に届いているのか、読まれているのか、海外から見た日本のCSR報告書の課題は何かなどを明らかにすることを目的に、グローバルサーベイを行いました。その際には、JFSのチャネルを通じて、サーベイへの参加を呼びかけさせていただきました。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

このサーベイの結果をもとに、以下のようなプレスリリースを出しましたので、ご報告いたします。

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海外の利用者の7割「日本企業のCSR報告書を読んだことがない」

日本の環境・CSRの情報を世界184カ国に発信している環境NGOジャパン・フォー・サステナビリティ(代表:枝廣淳子 以下、JFS)は、海外で日本企業のサステナビリティ報告書(国内では一般的に「CSR報告書」と呼ばれる)がどれだけ読まれているかのオンライン調査を実施し、日本企業のCSR報告書を読んだことのある海外の報告書利用者は3割にとどまると発表した。

JFSでは法人会員・情報発信パートナー企業の英語版CSR報告書のポータルコーナーを設けるなど、効果的な海外発信を通じての日本企業の価値創造の支援を行っている。その取り組みの一環として、2013年10~12月に環境・CSRに関心の強い海外の読者向けにJFSが発行する「JFSニュースレター」(184カ国、各国政府、国際機関、専門家、メディア、研究機関、企業、教育機関、NGOなど7700人に配信)を通じて呼びかけ、日本企業のCSR報告書についてアンケート調査をおこなった。

アンケートは、1)日本企業の報告書は海外でどの程度読まれているか、2)読んだことのある利用者は日本企業の報告書をどのように評価しているか、を調査することで、日本からのCSR報告の改善と日本企業のCSR活動の海外での認知度向上に資することを目的に実施し、近年報告書を利用した80人(有効回答76)から回答を得た。

回答者は、欧州(38%)、北米(25%)、アジア(21%)などから、研究者(37%)、産業界(16%)、NGO(14%)、政府(11%)と幅広い層の協力を得た。年間にCSR報告書を10冊以上読む利用者が3割超、5冊以上読む利用者が3分の2を占め、中位値は7.5冊。

CSR報告書を読む目的(複数回答)は、「企業のCSR評価」が65%、「特定課題の評価」が44%で、「研究目的」53%、「報告書表彰のため」23%、「投資」と「製品購入」が20%ずつであった。

76人中52人(68%)が「日本企業のCSR報告書を読んだことがない」と回答、海外での認知につなげたいと英語版のCSR報告書を作成している企業の思いがあまり実を結んでいないことがわかった。

日本企業のCSR報告書を読んだことのある回答者に、その企業名を自由に複数挙げてもらったところ、トヨタ自動車(6人)が最も多く、ついでソニーなど6社が2人ずつ、ほかは各社1人ずつで、計34社の日本企業の名が挙がった。

入手ルートはインターネットが少なくとも76%を占め、企業に連絡して入手した利用者が16%、報告書ポータルサイトなどを活用した利用者が16%であった。

日本企業のCSR報告書利用者25人に、報告書の質について尋ねたところ、それぞれ異なった企業を読んでいるために評価は大きくばらついた。概ね3分の1が肯定的に評価、4分の1が否定的に評価し、3分の1が賛否両面を指摘する評価であった。

否定的な意見の理由は、できたことのPR中心(「グリーンウォッシュ」)で透明性・信頼性に欠ける、報告が国内・環境分野に偏り、社会・経済分野や海外の情報が少ないなど報告内容が不十分である、目標の実施に関して基準を設けて進捗を報告する説明責任が弱い、などであった。

JFS代表の枝廣淳子(幸せ経済社会研究所所長)は、これらの結果を踏まえ、「CSR報告書は、ウォールストリートをはじめとする投資家にも企業のボトムラインに直結する情報として注目されるようになってきており、取り組みの遅れていた米国でも発行企業が激増している。グローバルに事業を展開したりグローバルに資金調達を望む日本企業がきちんとCSRの取り組みを世界に発信し、認知され、評価されることは、事業展開や資金調達上も不可欠。英語版CSR報告書を発行している日本企業は多く、さまざまなCSR活動を展開しているにもかかわらず、その存在自体がまだ海外の報告書利用者に知られていないのは大変もったいない。報告範囲・包括性を広げ、ステークホルダー・エンゲージメントや第三者意見などを通じて信頼性を高めるなど報告書の質の向上とともに、CSR報告書の存在と内容を環境やCSRに関心を持つより幅広い読者に広げることで、企業価値の創造につなげてほしい」と述べている。

JFSでは、法人会員・情報発信パートナーと今回の調査データやコメントを共有し、より効果的な海外発信を支援するとともに、10年以上の活動を通じて構築してきた世界184カ国のオピニオンリーダーにつながるJFSの海外発信チャネルをより多くの企業に活用してもらえるよう、呼びかける。また、今回の調査結果に基づき、日本企業の海外向けCSR・環境コミュニケーションの改善を図るためのセミナーやコンサルティングサービスを通じて、グローバルな企業価値創造を支援していく。

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サーベイでは、法人会員・情報発信パートナー企業の英語版CSR報告書のポータルコーナーについて、「役に立つ」「とても気に入っている。ひとつの便利なサイトから関連する多くの報告書にアクセスできる」「このサイトはとても優れた情報源だ。今後必ず利用する」「読んでみたいと思わせる報告書がたくさんありそうだ」「一度に数社を調べられるのは便利だ」「他の人にも知らせたい」など、うれしいコメントをたくさんいただきました。今後もコーナーの改善を図りながら、JFSのチャネルを活用して情報発信する企業も増やせるよう、がんばっていきます。

日本企業の英語版CSR報告書のポータルコーナー、ぜひご活用いただけたら幸いです。
http://www.japanfs.org/en/supporter/csr-reports.html

JFS seminor

(枝廣淳子)

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