ニュースレター

2012年08月07日

 

日本でも固定価格買取制度が始まった!

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JFS ニュースレター No.119 (2012年7月号)


再生可能エネルギーを後押しする制度

2012年7月1日から、日本でも再生可能エネルギーを普及するための「固定価格買取制度」が始まりました。10~20年という決まった期間、電力会社は再生可能エネルギーで発電した電力を事前に決められた固定価格で買い取ることを義務づけられるという制度です。

これまで日本では、一定割合以上の再生可能エネルギー利用を電力会社に義務づけるRPS法で再生可能エネルギーの普及を図ろうとしていました。しかし、その買取価格は、風力であれば1キロワット時当たり10円前後といわれ、事業者にとってそれほど魅力的ではなく、普及を後押しするものとはなっていませんでした。電力会社に義務づけられた導入比率が低かったことも、普及が進まなかった理由の1つとされています。

2009年11月には再生可能エネルギーによる電力の買取制度が日本で始まりましたが、その対象は主に家庭での太陽光発電のうち、自宅で使い切れなかった余剰分だけの買い取りだったため、その効果は限定的でした。今回の制度は、太陽光(10kW未満は余剰電力の買取)以外に風力、水力、地熱、バイオマスにも対象を広げ、余剰分だけではなく発電した全量を買い取るという点で画期的なものです。

日本の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、2010年度には9.7%、水力発電を除くと約1%にすぎません。しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故後、日本では、再生可能エネルギーへの期待が高まっています。

欧州での再生可能エネルギーの発電比率は、デンマークが約28%、スペインが約25%、ドイツが約16%といわれています。日本でふるわなかった理由は、当初の導入コストが高く、採算がとれる見込みは低く、自治体や地域のNPOしか導入しなかったためです。再生可能エネルギーの発電量を大きく増やすには、民間企業が参入し、適切な利益を上げられる体制をつくる必要があります。

買取価格は、経済産業省に設置された調達価格等算定委員会が、再生可能エネルギーの事業者からも意見を聞き、普及を後押しできるレベルに設定しました。投資に対する内部収益率(IRR)は、ドイツでは5%を標準としていますが、今回の新制度では太陽光で6%、風力8%、地熱は資源開発の負担が大きいため13%と高い設定になっています。買取価格は、事業者の費用に利益率を上乗せする仕組みであるため、計画通り発電すれば確実に利益が出る仕組みなのです。

買い取り費用は1キロワット時当たり0.22円を毎月の電気代に上乗せする形で、国民が広く薄く負担することになります。電気使用量が月300キロワット時の家庭の場合、毎月の上乗せ額は66円となる計算です(現在の電気代はおおよそ7,000円)。普及に伴う量産効果によりコストダウンを図り、買取価格に反映させながら、消費者の負担が大きく膨れ上がらないよう運用していくことが期待されています。


急拡大する太陽光発電

今回の固定価格買取制度の導入による効果は既に明らかになっています。太陽光発電による電力供給は、初年度(2013年3月末まで)だけでも、現状の1.4倍になる見込みです。このうち約8割が家庭からの買い取りになると見られています。太陽光発電は、欧州ではメガソーラーが中心で、住宅用は1割ですが、日本では8割が住宅用なのです。

家庭の屋根に設置する太陽光発電の場合、今回の制度によって10年程度で設置費の元が取れ、それ以降は利益になるというシミュレーションもあります。現在、日本全国で、耐震基準を満たすなど太陽光パネルを設置できる住戸は1,200万戸あると計算されており、今後さらに大きな市場になっていくでしょう。

市場の拡大に伴い、家庭用の太陽光発電システムの価格は、この1年で15~20%下落しています。1キロワット当たりの価格は平均して40万円台ですが、家電量販店では40万円を切るシステムの販売も始まっています。太陽光発電協会によると、家庭用の太陽光発電の設置件数は、4月末で100万件の大台を突破しました。2011年度だけで23万件以上増えています。

自治体などが学校や自治体所有の施設の屋根を貸し出すことで、太陽光発電事業を実施する動きも盛んになっています。埼玉県では、県内市町村と協力して、太陽光パネルを設置できる住宅を登録し、まとめて企業に貸し出す仲介役を行う事業を開始、県が仲立ちすることで、企業による太陽光発電を促し、エネルギーの地産地消を目指す考えです。


メガソーラーも拡大中

メガソーラーの新設も計画、準備されています。その出力を合計すると130万キロワットを超え、原子力発電所1基の発電能力を超える規模となっています。

これまで企業が太陽光発電に投資をしてきたのは、自社のCO2削減といった環境対策やCSR(企業の社会的責任)が動機でしたが、新制度導入で、売電事業でいかに収益を上げるか、さまざまな企業で取り組みが始まっています。

通信事業者であるソフトバンクは、2013年までに全国7道府県でメガソーラーを設置する予定で、合計25万キロワット以上の発電能力を持つ、国内最大の太陽光発電事業者になる見通しです。

ソーラーパネルメーカー大手である京セラでは、日本国内の太陽電池パネルの需要が急増し、国内工場だけでは賄えないため、欧州の自社工場から逆輸入することになりました。また、定款を変更し、自ら発電事業ができるようにもなっています。

昭和シェル石油の太陽電池事業子会社ソーラーフロンティアは、販売代理店を1~2年以内に5割増やす考えです。ソーラーフロンティアが製造販売しているのは、銅などを原料とするCIS太陽電池ですが、2012年には前年比5割増の60万キロワットの販売を計画し、販売量の国内比率は前年の3割から6割へと高まる見通しです。世界最大級である、宮崎県にある年産能力90万キロワットの第3工場も稼働し始めました。


洋上風力への期待

世界に比べ、日本の風力発電があまり延び得ていない理由の1つは、風況が良くないことです。日本では、風の強い地域の多くの地形が複雑で、風向きや風速が頻繁に変わり、出力を安定させにくいのです。

そのため、期待されているのが洋上風力発電です。風向きや風速が安定しており、騒音や震動といった問題も起こりにくいからです。日本の海の場合、遠浅の沿岸が少ないため、「浮体式」への期待が高まっています。技術的な課題があるため、現時点で実用化されているのはノルウェーの1基のみですが、日本でも、長崎県五島市の沖合で浮体式洋上風力発電の実証実験が開始される予定となっており、福島県沖でも浮体式発電基地の建設が予定されています。

風力発電は大きな発電が期待できますが、日本では、北海道や東北という風力資源に恵まれた地域と、電力の大消費地である都市を結ぶ送電線網が整備されていないため、特定地域に関しては、政府が送電線網整備を支援することも検討されています。

今回の固定価格買取制度の導入を受け、太陽光や風力発電の新規事業計画が全国で進められており、その合計200万キロワットを超えているそうです。原子力発電所2基分に相当する発電能力となります(稼働率を考えると原子力発電所半基分程度です)。


開発が再開した地熱発電

地熱発電は、1999年以来新設が止まっていましたが、出光興産など9社が福島県に27万キロワット規模という国内最大の地熱発電所を造る構想を発表しています。10年後の稼働を目指しているそうです。

太陽光発電の設備利用率が約12%、風力が約20%であるのに対し、地熱発電は原発並みの約70%の設備利用率を誇ります。産業技術総合研究所によると、日本の地熱資源は約2,000万キロワットと、世界有数の規模なのです。

現在、日本の再生可能エネルギー市場の規模は、国内約1兆円とされていますが、2020年には10兆円規模に拡大するという試算もあります。この市場拡大に伴い、50万人の雇用が創出されるという試算も出されています。

高い技術力を持ちながらも、適切な市場拡大策を講じてこなかったために、国内の設置容量や製造能力などの点で、他国の後塵を拝してきた日本ですが、ようやく再生可能エネルギー拡大の原動力の一つとなる固定価格買取制度が導入されました。今後の展開に大いに期待し、よりよい制度の運用という点でもあとに続く国々に伝えられるものを作りだしてほしいと願っています。

参考) 枝廣淳子&幸せ研 関連動画: 固定価格買取制度について、担当者に聞く
http://www.youtube.com/watch?v=ZoazReOTHqs


(枝廣淳子)

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