ニュースレター

2010年12月21日

 

人、そして地域の「らしさ」を大切に、省エネ推進で持続可能な社会に貢献する ~ 株式会社モスフードサービス

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.96 (2010年8月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第94回
http://www.mos.co.jp/

JFS/Conserving Energy and Contributing to Sustainable Society, While Recognizing Individuals and Community Uniqueness: MOS Food Services, Inc.
Copyright 株式会社モスフードサービス


モスフードサービスの経営する日本生まれのハンバーガーチェーン「モスバーガー」は、国内第2位のシェアを占め、全国各地に1,368店舗(2010年3月31日現在)を展開。「人間貢献・社会貢献」を経営理念に掲げ、「食を通じて人を幸せにすること」を企業目標とし、日本国内はもとより、アジアへも事業を展開しています。

第1号店がオープンした1972年から今日に至るまで、「日本で生まれ、日本の味を大切にするハンバーガー専門店」という姿勢を守り、安心で安全、おいしい食材を基本に、国産素材を活かし、地域に根ざした商品開発を行ってきました。

2009年度からは、バンズ(パン)にはさむパティ(肉)を2枚に増量し、量的な満足感を提供するメニューや、朝食市場に参入すべく、パティを通常の4分の3にしたライトなメニューの開発など、幅広い顧客のニーズに応える商品開発にも取り組んでいます。

基本を守りながら常に新しさを提供し続け、ハンバーガーチェーンとしての持続可能性を追求するモスバーガー。環境への取り組みについても、フランチャイズ各店への省エネとコストの相関関係を明らかにしたアプローチで取り組んでいます。

「現場のバイタリティをいかに引き出し、モチベーションを保ち続けるかが私たちの仕事です」と語る、CSR推進室社会環境グループリーダーの中山卓三さんにお話を伺いました。


省エネでコストもCO2も削減できることを「見せる」

モスフードサービスでは、2010年4月から3年間の中期環境行動計画の中で、使用エネルギーを5%削減する目標を掲げています。CO2排出量の削減目標を掲げる企業が多い中、エネルギー削減量を提示しているのには、理由があります。

「温暖化とCO2の関係は、誰もが情報として知るところですが、CO2は目に見えないので、取り組みの結果をCO2排出量で評価されても実感が伴いません。業務でのエネルギー使用量を削減することでCO2排出量の削減はもちろん、経費削減にもつながり、利益を生みだすひとつの手法になることを伝えると、フランチャイズ各店舗は実感をもって理解できます。そして、さらに良くするための感性が働き始めます」(中山さん)

省エネに向けては、設備など機器類の省エネ化を図ることと、その運用の工夫で省エネを推進する、この2つが両輪となります。設備の省エネ化については、経済産業省の「省エネ大賞」を受賞しているような機種を、2004年ごろから積極的に取り入れてきました。中でも店舗での消費電力の3分の1を占める空調には、これを特に推進しています。

運用の工夫という点では、モスフードサービスでは、社内と外部のエネルギー関係のコンサルタントによる「省エネ推進会議」を立ち上げています。会議では、これからの省エネの仕方やエネルギーの使い方、改正省エネ法への対応の仕方について考えるほか、社内にどのように伝えていくかについて、月1回の定例会を開催して検討を重ねています。

具体的には、省エネ活動を推進するために、サンプルとして5店舗を選び、設備別使用量を1年間モニタリング。空調のフィルター清掃回数、こまめな室温調整、照明の点灯・消灯時間など、普段「何となく」済ませていることの中で、改善できるポイントを細かくマニュアル化し、店舗教育に役立てているといいます。

たとえば、ガス。直接調理にかかわるだけに削減が難しいところですが、機械によってウォーミングアップの時間に違いがあることを発見してからは、開店時間に合わせて機械ごとにスイッチを入れる時間を変えるようになったといいます。

「自分たちが行動を変えることで、どのような変化・成果が生まれるのか。それを一目でわかるように伝えることを心掛けています。温暖化など環境問題の一般的な最新情報を、タイミング良く伝えることは、さほど難しくありません。むしろ、モチベーションを保ち、行動を維持する、それを大切にしています」(中山さん)


地域に根ざした自発的な取り組みを応援

モスフードサービスでは、モスグループの社会・環境への取り組みやコミュニケーション活動をステークホルダーにわかりやすく発信する『モスのコミュニケーションレポート』を作成していますが、レポート制作の過程で、多数のお店が、店づくりや地域活動の一環として、ユニークな環境への取り組みを行っていることが見えてきたそうです。

たとえば、北海道の留萌店。業務用車両に、会員登録制で利用するカーシェアリングを利用していることがわかりました。長野県、山梨県にある店舗では、「緑のカーテン」を作り、自然の涼感を感じながら、冷房効果を高める工夫をしていました。

ほかにも、廃油でつくった石鹸やキャンドル、コーヒーかすを再利用した脱臭剤を来店者に配っている店舗や、販促用の「のぼり」などで作ったカバーに、洗浄殺菌後にカットした使用済みのストローを詰めて枕を作った店舗もありました。いずれも、現場の自発的な取り組みです。

店舗の話を聞いていくと、そのどれもが「環境のために」と大上段に構えてやっているわけではなく、「もったいないから」「このほうが気持ちいいから」という、日常の「当たり前」の感覚から自発的に始まった、楽しみながらやっているものばかりでした。

「こうした取り組みに触れて、本部の私たちにできることは、各店の地域性や個性、特技や才能、思いを大切にし、表現できる場を提供すること。お客さまの目の前にいるのは、お店の方々です。メニューへの自信はもちろんですが、お客さまにも環境にもいいことを自発的に考え実行し、やりがいを持って働く姿に、お客さまが共感してくださる。そこがモスの強みだと思っています」(中山さん)


減るゴミ、増えるゴミ

中期環境行動計画には、省エネ活動の推進のほかに、資源有効利用活動の推進があり、食品ロスの徹底削減や、店舗の食品廃棄物のリサイクルループの確立、店舗でのリユースの取り組みが挙げられています。

「食品ロスの削減については、お店から出たゴミを広げ、実際に仕分けして、何がどのくらい廃棄されているのかを把握するように努めています」(中山さん)

2009年の食品リサイクル率(再生利用等実施率)は37.3%。年々比率は増しているそうですが、さらに根本的な取り組みとして、リサイクルの前の発生抑制にも力を入れています。たとえば、創業当時から「アフターオーダー方式」を採用し、店頭で注文があってから商品をつくるため、つくり置きのロスを防ぐことができます。

また、すでに店づくりの一環として独自に野菜くずなどを堆肥化し、店舗敷地内の一角にミニ菜園をつくり、野菜を育てている店舗がありました。収穫された野菜は、来店者にお裾分けしたり、本部に届くこともあるといい、こうした草の根の活動が将来どのように実を結ぶのかも興味深いところです。

反対に増え続けるものに、店舗への食材納入の際の個包装材(ビニール袋など)があります。食品の安全性と食品ロス削減のために、個包装、小ロットでの納入になったことが要因です。どのように解決していくのかが、今後の課題です。


「モスらしさ」を大切に、おいしさを追求する

今、外食産業の中では、食料自給率の向上に貢献していこうという意識が高まっているといいます。モスフードサービスでも、これまで以上に国産素材の活用を考えています。

2008年から販売している「とびきりハンバーグサンド」は、「国産素材へのこだわり」「旬を味わうという発想」「お手頃価格」がコンセプトのメニュー。重量比49.6%という高い国産率で市場のニーズと合致し、食料自給率向上に寄与したとして、「FOOD ACTION NIPPONアワード2009プロダクト部門優秀賞」(主催:FOOD ACTION NIPPONアワード2009実行委員会主催、共催:農林水産省)を受賞しました。
http://syokuryo.jp/award/list/product.html#sec08

「肉、野菜、ソースまで国産にこだわった理想のハンバーガーです。人に喜ばれるいい商品を提供している手応えを感じ、自分たちの取り組みに自信が持て、企業としてこの土俵で生きる覚悟が定まった商品になりました」(中山さん)

社会がどのように変わっても、モスバーガーの「らしさ」の原点は、やはり「おいしさ」の追求です。地域と人の「らしさ」を大事にしながら、おいしさとそれを支える仕組みづくりはさらに進化していきます。


(スタッフライター 青豆礼子)

JFS記事:人と自然を"食"で結ぶ - モスフードサービス
http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027334.html

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