ニュースレター

2010年03月23日

 

天然ガスの可能性を追求し、次世代エネルギーの研究開発で、持続可能な社会システムの実現に貢献する ~ 東京ガス株式会社

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.87 (2009年11月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第85回
http://www.tokyo-gas.co.jp/


日本のエネルギー供給は、オイルショック当時、その約80%を石油に頼っていました。近年、その割合は約50%まで下がり、天然ガスや原子力等のエネルギーによって補完されています。

中でも天然ガスは、1970年には日本の一次エネルギーの中で、およそ2%程度だったものが、石油の代替エネルギーとして導入が促され、2007年には15.7%を占めるまでに拡大。火力発電用、都市ガス用などに利用され、日本のエネルギー供給を支える柱のひとつになっています。

一次エネルギーの中で天然ガスの占める割合は、今後も増える傾向にあると見込まれています。その理由のひとつとして、地球温暖化が世界的な問題となる今日、石油や石炭に比べて、天然ガスがクリーンエネルギーであることが挙げられます。燃焼時に排出される二酸化炭素が、他の化石燃料に比べて低いという特性があるのです。

天然ガスを供給する一般ガス事業者は、都市ガス供給者だけでも日本には211社あります。1885年創業の東京ガス株式会社(以下、東京ガス)は、首都圏を中心とする地域に都市ガスを供給する、日本最大のガス供給会社です。1969年、日本で初めて液化天然ガス(LNG)を導入して以来、その普及拡大に努め、現在は1000万件超の顧客を擁しています。

東京ガスは、2009年4月より中期経営計画をスタートしました。「天然ガスをコアにした総合エネルギー事業」を堅持しつつ、Eco-friendly=環境を機軸とした価値創造、Excellent service=お客さま価値の向上、Expansion=マーケットの徹底深耕・拡大、の3つの「E」を進化・発展の重点的取り組みとして掲げています。

今回は、東京ガス総合企画部エネルギー・技術グループ担当副部長の片山敬一さん、環境部環境推進グループ担当課長の蓮沼照一郎さんにお話をうかがいながら、幅広い取り組みの中でも、家庭用燃料電池とバイオガスの活用を中心にご紹介いたします。


エネルギーを使う「家」から、エネルギーをつくる「家」へ

家庭用の天然ガス利用として最も注目される取り組みが、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」です。ガス・電気・灯油などのエネルギーを使うだけの場所だった従来の「家」から、エネルギーを創り出すことのできる「家」へ。低炭素社会の実現へのアプローチとして、住宅の在り方を変える新しいシステムです。

エネファームでは、LNGタンクから都市ガスとして供給されたガスを自宅で発電させることができます。また、電力をつくる際に発生する廃熱でお湯を沸かすこともできるため、エネルギー利用効率は80%にもなります。火力発電所で電気をつくり、送電線で家庭に届けられる場合の利用効率は37%と言われていますから、一次エネルギーの利用として非常に効率のよいシステムです。

このシステムを導入するだけで、一次エネルギー消費量を従来の約33%、CO2排出量を従来の約45%を削減することができるとされ、「今までの暮らしはそのままに、環境に貢献することができるのです。エネファーム導入時にガスコンロなども高効率の機器に換えれば、さらにCO2を削減することができます」(片山さん)

環境・省エネへの取り組みが進む一方で、日本の社会は、高齢者世帯の増加という問題にも直面しています。そこで電力会社は、高齢者にも安心だとして「オール電化」を提案し、需要を伸ばしています。こうした中でガス供給業界も、ガスコンロの安全性を格段に向上させるとともに、家庭需要の維持を図るためにも、エネファームの普及に力を入れていこうとしているのです。

「エネファームは、環境意識の高まる中、ハウスメーカーなどに採用され、住宅の機能の一つとして最初から組み込んでいただくことで、一層の普及が図れるのではないかと考えています。また、既存住宅に普及していくには、設備の大きさに課題がありますが、さらなる技術開発で小型化・低コスト化を進めています」(片山さん)

設置面積などの点で、エネファームの導入が困難な住宅向けには、「エコジョーズ」という潜熱回収型ガス給湯器があります。給湯効率を95%にまで向上させ、従来品と比べてCO2排出を13%削減できます。2008年度、東京ガス管内で7万2164台が新規導入され、家庭からのCO2排出削減に一役買っています。

エネファームやエコジョーズは、太陽エネルギーと組み合わせることで、さらなるCO2削減につながる可能性を秘めており、エネファームと太陽光発電を組み合わせたW(ダブル)発電は極めて高い環境性で注目されています。また、ガス供給業者で組織する日本ガス体エネルギー普及促進協議会は、2009年9月、太陽熱温水器の普及に力を入れることを表明。東京ガスでも、ベランダに取り付け可能な太陽熱温水器とエコジョーズの組み合わせによるCO2削減効果をアピールし、2010年始めからハウスメーカーなど事業者向けの営業を開始する方針です。


バイオエネルギーの活用

2009年7月、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律「エネルギー供給構造高度化法」が公布、8月に施行されました。

この法でガス事業者には、バイオガス利用促進が義務づけられたこともあり、大手の東京ガスと大阪ガスは、2010年度から生物由来資源からつくるバイオガスの活用を始めることを決定しました。

東京ガスは、食品廃棄物リサイクル工場からバイオガスを買い取り、都市ガスに混ぜて一般家庭に供給する予定です。バイオガスの受入量は、都市ガス換算で年間約80万立方メートル。およそ2,000世帯分に相当し、CO2削減量は約1,830トンとなる見込みです。

ここに至る布石として、東京ガスは、2008年4月に「バイオガス購入要領」を公表しました。これは、供給ガスへのバイオガス利用を促進するため、都市ガス大口売価並みの価格水準で購入することを定めたものです。また2008年11月には、環境省の「地球温暖化対策技術開発事業」の採択を受け、東京都環境整備公社と共同で、オフィスビルなどから出る紙ゴミと生ゴミからバイオガスを回収する実証実験も開始しています。

JFS参考記事:東京ガス 2008年4月よりバイオガスの購入を開始
http://www.japanfs.org/ja/pages/024892.html


実証実験では、バイオガスと都市ガスの最適な混焼技術の開発、バイオガス貯留タンクを最小化・不要化できるコンパクトなシステムの開発に取り組んできました。こうしたステップを経て、いよいよ2010年から始まるバイオガス利用の実現への道筋をつけてきたのです。

天然ガスの可採年数は、2008年時点で約60年とされていますが、非在来型の天然ガスやメタンハイドレートなど新しい天然ガス資源の開発も進められています。「オバマ大統領がスマートグリッドを提唱されましたが、ガス事業者としては、電力だけでなく、ガス、熱、そして今後期待される水素エネルギーなども含めて、エネルギー全体の最適化を目指した『スマートエネルギーネットワーク』を構築していく方針です」(片山さん)。

天然ガスのさらなる有効活用、他のエネルギーと補完し合うシステムの開発、太陽光だけでなく太陽熱も含めた太陽エネルギーの活用、風力、そしてバイオマスとその先につながる水素エネルギーの利用。東京ガスは持続可能なエネルギー供給会社として、次世代への安定的な供給を目指し研究を続けています。

(スタッフライター 青豆礼子)

English  

 


 

このページの先頭へ