2008年06月01日
Keywords: ニュースレター
JFS ニュースレター No.69 (2008年5月号)
2003年に始まった「100万人のキャンドルナイト」は、いよいよこの夏至で5年目を迎えます。
この運動が始まる最初のきっかけとなったのは、2001年に「1ヵ月に1基ずつ原子力発電所を建設する」という米ブッシュ大統領の政策に反対してカナダで始まった自主停電運動でした。
「日本でもやってみよう」と、NGOの大地を守る会とナマケモノ倶楽部が取り組み始め、さらに、いくつかの日本の環境系NGOなどが中心となり、2003年6月22日の夏至の夜、「でんきを消して、スローな夜を」というスローガンのもと、「100万人のキャンドルナイト」が初めて行われました。
http://www.japanfs.org/db/360-j
夏至の夜の8時から10時までの2時間、電気を消してロウソクの灯りの下、思い思いの時間を楽しもうというものです。キャンドルの灯りの下で、食事をする。音楽を聴く。お風呂に入る。地域で行われているイベントに足を運ぶ人もいれば、テレビのない静かな夜を思い思いに楽しむ人もいます。モノや情報を一時的にオフにすることで見えてくる「もう一つの時間」「もっと多様な豊かさの尺度」を社会的な経験として共有しようという、自主参加型の文化創造キャンペーンといえるでしょう。
「省エネ」や「反原発」などの政治的なメッセージを超えて、「でんきを消して、スローな夜を」それぞれに楽しんでみよう、という幅の広い趣旨が多くの賛同を呼びました。当初は、いつか100万人が参加してくれればいいねという願いを込めて『100万人のキャンドルナイト』と名づけたのですが、第1回から日本全体で500万人が参加し(環境省推定)、東京タワーや姫路城など全国で200以上の大型施設の照明も消されました。
その後も、参加者や参加イベント数を増やしながら、毎年夏至と冬至に開催されています。2007年には、全国で東京タワーなどの大規模な施設を含む39,845ヵ所が消灯し、812,508kWhの電力が削減されました。
そして、日本だけではありません。2007年からは、韓国のNGO、Korean Environmental Women'sNetwork(KEWN)も連動してキャンドルナイトを行いました。これまで、台湾、オーストラリア、中国(上海)、モーリシャスなどでも行われています。「100万人のキャンドルナイト」が配信している英語のニュースレターも現在、64カ国に届けられ、それぞれの地域での活動や思いをつなげています。
キャンドルナイトは、幹事会が先頭に立ち旗を振って広めるものではなく、プラットフォームの提供に徹しています。だからこそ、各地でいろいろな動きが生まれ広がっていくのでしょう。
一人一人の思いは小さくても、それが集まったときのパワーは大きいと思います。オーストラリアのアースアワーなど世界の動きとつながり、それらの活動の背後にある思いをつないだり、見える形にしていければと考えています。多くの人は、地球や未来についての思いはあるけれど、まだ、それらが大きく政治や経済を変えるところまでいっていません。そのような思いをつなぐことで力に変えていくことができたら、と思うのです。
この「つながり」に一役買っているのが、携帯電話やインターネットなどの先端的なIT技術を駆使した「キャンドルスケープ」です。日本国内のみならず、世界中から参加メッセージを送ることができ、送られたメッセージは「キャンドルスケープ」ページの世界地図上に、リアルタイムに光の点となって表示されます。この「キャンドルスケープ」によって、参加者は思いを共有する世界中の参加者の存在を実感できるのです。
今年の夏至は6月21日。そして、その約2週間後の7月7日には、北海道でG8洞爺湖サミットが開催されます。そこで、「世界は、G8の参加国だけじゃないよね。もっとたくさんの国のたくさんの人たちの意見をキャンドルナイトを通じて発信できないだろうか」という思いから、今年のキャンドルナイトは特別に、6月21日(土・夏至)-7月7日(月・七夕)まで開催期間を延長して、「でんきを消してスローな夜を」呼びかけます。
期間の延長だけではありません。これまでの「キャンドルスケープ」を大幅にバージョンアップし、世界中からメッセージを集めると同時に、世界に発信するために新たなステップを踏み出します。
世界中のだれでも、自分の住んでいる場所を画面内の地球上でクリックし、自国語または英語で短いメッセージを書き込んで発信することができます。メッセージが次々と地球から湧き起こるように表示され、国境を超えて思いがつながっていくようすがわかる仕組みになっています。
キャンドルスケープのトップページには、「ろうそく」という言葉が20カ国語で表されています。自分の書き込みたい言語の「ろうそく」をクリックすると、その言葉でメッセージを書き込むことができます。(今年はまずこの20カ国語ですが、今後、言語数を増やしていきます)
世界からのメッセージがキャンドルスケープという場で交差していきます。多くの人のメッセージをウェブ上で可視化するキャンドルスケープは、世界中の小さな思いを伝えるための絶好のターミナルになるのです。
夏至と冬至、年2回のキャンドルナイトですが、日本でも世界でも、地域やカフェ、または家庭でも、何らかの思いを持っている人たちが集まり、それぞれに各地で動き始めています。キャンドルナイト自体が、人々に何か行動を起こさせる一つのきっかけになっているのです。
そして、思い思いに参加する方々が、慌ただしい日常の中でも、ちょっと立ち止まって、目の前のことだけではなく、本当の幸せなど本当に大切なことに思いをはせる場になれれば、と思っています。立ち止まったり、考えたり思いを馳せたりする時間こそが、日本や世界の社会や経済をよい方向に変えていくレバレッジ・ポイント(てこのように、小さい力でより大きな ものを持ち上げるためのポイント)のひとつだと信じているからです。
皆さんもキャンドルナイトに参加しませんか。どうぞ、キャンドルスケープへメッセージを届けてください。小さな思いも集まることで世界を動かす力となっていくのです。
(枝廣淳子・岸上祐子)
キャンドルナイト
http://www.candle-night.org/
地球型掲示板、「キャンドルスケープ」にメッセージをお寄せ下さい。
http://www.candle-night.org/jp/about/