ニュースレター

2008年06月01日

 

北海道洞爺湖G8サミットに向けた日本の環境市民活動の動き

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JFS ニュースレター No.69 (2008年5月号)

2008年7月7日から、北海道の洞爺湖でG8サミットが開催されます。このサミットは環境サミットとも言われ、特に気候変動・温暖化の問題が大きく取り扱われることが予想されていることもあり、日本の市民団体が、このサミットに向けて大きく動き出しています。今回は、その動きについてお知らせいたします。
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/Gaiko/summit/toyako08/index.html

2008 G8サミットNGOフォーラム

2002年にヨハネスブルグで持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)が開催されましたが、この会議には数多くの日本のNGOが参加していました。このサミットは、日本の市民活動が、世界に向けての大きな一歩を踏み出した機会のひとつでもあります。

「2008年G8サミットNGOフォーラム(以下、NGOフォーラム)」は、持続可能な社会の実現をめざして、環境、平和、人権、世界の貧困問題の解決と開発などの地球規模の課題に取り組んでいる日本のNGOが集まり、洞爺湖サミットに向けて結成されました。設立は2007年1月31日ですが、その準備は、その前年から始まっていました。

もともと日本では、NGOなどの市民活動は欧米などに比べると規模も小さく(最大の環境団体の会員数が約48,000人)、言葉の壁などもあって世界へ出て行く機会も少なく、また国内においても課題ごとに小さくまとまってしまい、他の組織などとの横のつながりには乏しいところがありました。しかし、近年になって多くの国際会議に出席するようになり、世界規模のNGOや組織と出会う中で、日本で活動する団体にも連携していく必要性が強く実感されたのでしょう。このような経験を重ねていったことが、今回のNGOフォーラムという大きなネットワークを生み出す原動力となっていきました。

NGOフォーラムは、世界の主要首脳国の会議であるG8サミットが日本で行われるにあたり、地球規模の課題の解決に向けた合理的な提言を行うことを目指しています。それぞれの課題と活動テーマにあわせて、「環境」「貧困・開発」「人権・平和」の3つのユニットに分かれて活動を展開しており、当初30団体ほどから始まった参加団体は、いまや135団体(2008年5月27日現在)になっています。これだけの規模でテーマを超えた活動を行ったことは、これまでありませんでした。
http://www.japanfs.org/db/1997-j

環境ユニットの動き

NGOフォーラムに参加している団体のうち、環境に関わる活動をしている団体は60団体ほどです。

環境ユニットでは、主に3つのテーマを掲げて活動をしています。ひとつめは、地球規模の緊急課題である"気候変動(地球温暖化)"、ふたつめは2010年目標(生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる)の促進を目指した"生物多様性"、それから有害廃棄物の輸出を規制し真の資源の国際循環を求める"3Rイニシアティブ"です。それでは、この環境ユニットではどんな活動をしているのか、気候変動のテーマを中心に見てみましょう。

気候変動は、言うまでもなく先進国が生み出してきた温室効果ガスの排出が大きな原因となって引き起こされています。地球規模で進む温暖化に対して先進国は大きな責任がありますが、環境ユニットでは日本政府に対し、中長期的な削減目標を掲げ、国際的な合意形成に向けて積極的に取り組むよう提言を出しました。

その提言では、(1)世界のCO2排出量が今後10年以内にピークを迎えるようにし、世界では2050年までに1990年比で50%以上の削減を、先進国は2020年までに少なくとも1990年比25-40%削減を実現すること、(2)国連の枠組みを取り組みの中心とし、先進国の取り組みは総量削減義務の設定を基本とすること、(3)気候変動がもたらす悪影響への適応策や途上国への技術移転のために十分な資金を供与すること、(4)議長国日本は、自らの中長期目標を設定し、実効性のある国内政策措置を早期に導入することとし、世界を持続可能な社会へ導くために、率先してアクションを取ることを日本政府に強く求めています。

この提言を実現するため、これまで環境ユニットでは、2007年の秋から日本の各政党に向けての気候変動に関する勉強会や省庁との意見交換会を開催したり、2008年3月には、「G20グレンイーグルズ国際NGOワークショップ 気候変動と将来枠組み」と題して、海外NGOや日本政府の外務省、環境省、経済産業省の審議官などをスピーカーに迎え、公開セッションを行ってきました。

それらの活動のひとつの山場が、4月23-24日に京都で行われた「Civil G8 対話」だったと環境ユニット事務局の星野智子さんは言います。Civil G8 対話とは、2006年のロシアや2007年のドイツのサミットの際にも行われている、政府と市民社会の対話を行う試みです。今回は国内外から200名近くのNGOが京都に集まり、地球規模課題の解決を求めて、G8シェルパ(首脳の個人代表)と直接討議を重ねました。

ここでNGOフォーラムは、日本政府に向けて「北海道洞爺湖サミットの行方を案ずる緊急声明」を出しました。世界が注目している地球規模の課題解決に向けて、日本政府が議長国として率先して具体的な政策を提言しておらず、議論が進展していないことなどをあげ、サミット開催の行方に対しての懸念を述べ、特に、温室効果ガス削減中期目標の発表と、ミレニアム開発目標における貧困の解決に向けて指導力を発揮するよう、再度、強く求めました。

これらの動きを受けてか、この5月に、日本もようやく、温室効果ガス削減目標の長期的な数値目標を設定すべきという認識が福田内閣から出てきました。今後の討議の行方について予断は許しませんが、これは成果のひとつと言えるでしょう。

市民を巻き込みつながっていくこと、これから

では、日本の市民はこのサミットや環境のテーマについて、どのようにアクションしているのでしょうか。NGOフォーラムでは、NGO同士のつながりや政府への働きかけのほか、一般向けの定期的勉強会なども行っていますが、今、行っているアクションが「100万人のたんざくアクション」です。

日本には古くから、7月7日に色とりどりの細長い短冊に願いを書いて笹に飾って星に祈るという、七夕という風習がありました。サミット開催日がこの七夕にあたることから、「これからの世界がこうなっていてほしい」というメッセージを広く市民から集め、NGOフォーラムから首相へ届けることにしたものです。

「世界は、きっと、変えられる」、「あなたの声でG8首脳を動かそう!」と呼びかけたこのアクションは、今、大きなうねりになりつつあると星野さんは言います。これまでは、なかなか活動に参加できなかった市民がイベントやインターネットなどを通じて、自分の言葉でメッセージを寄せています。NGOフォーラムは、こういった日本中の市民活動団体の活動拠点としての役割を担ってきたのです。

また、サミットが開催される北海道でも、新たな動きが生まれています。北海道の約50の団体や市民が地域の視点からグローバルな問題を考えることを目的にネットワークを組んで、「G8サミット市民フォーラム北海道(以下、市民フォーラム北海道)」を立ち上げました。市民フォーラム北海道では、開催地であることも踏まえ、市民に開かれたサミットであること、アイヌ民族の先住権の問題をグローバルな視点で捉えることなどをテーマに、地域の緩やかなネットワークの構築を目指しています。

サミットが行われる7月には、NGOフォーラムと市民フォーラム北海道が協働で、北海道でのいくつかのアクションが予定されています。中でもG8サミットと時期を同じくして開催される「オルタナティブ・サミット」では、サミットに市民の声を反映させるための国際会議やワークショップ、展示イベントなどを行っていくことが予定されています。

それから最後に、忘れてはならないのは日本のユースの動きです。最近、日本では学生たちの環境活動が盛んで、都市部の環境イベントなどをリードしていますが、洞爺湖サミットに向けても、それらの学生団体が連携してG8に青年の声を届けようとJapan Youth G8 Projectが結成されました。3月には日本の青年たち150名が集まって、青年たち自身の手でユースサミットを開催し、6月には世界の青年たちも招いて世界ユースサミットの開催も予定されています。
http://www.japanfs.org/ja/pages/029123.html

洞爺湖サミットで話される地球規模の課題は、そのまま青年たちの未来に関わってきます。日本の青年たちは、このサミットを機に集まりましたが、今、継続していけるような枠組みを残せるよう、NGOフォーラムもサポートしていると言います。

NGOフォーラム自身もまた、サミットに向けてのアクションを行いつつ、サミット後のネットワークについても模索をしています。世代を超えて、分野を超えて、持続可能な未来へ向けた日本の市民団体の取り組みが、確実に動き始めています。

(スタッフライター 三枝信子)

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