ニュースレター

2006年12月01日

 

美と健康と地球環境の三位一体 - アヴェダ

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.51 (2006年11月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第54回
http://www.aveda.co.jp/

1970年代にヘアスタイリストとして活躍していたホースト レッケルバッカーは、ある時ひどく体調を崩しました。彼は、植物学者だった母の教えに従って植物を使った治療を試み、このときの実体験によって、植物の持つ力に気づきました。

当時、美容室で使われていたシャンプーやヘアケア製品には、多くの化学物質や石油由来の成分が含まれていました。彼は化学製品で人を美しくすることに疑問を持ち、「人間の身体にとって健康な成分を使って、美しさを提供したい」と思うようになりました。そして世界中を旅して、インドの伝承医学アーユルヴェーダに出会いました。

アーユルヴェーダは、植物を取り入れることで、自然治癒力を高め、心身のバランスを保ち、健康増進を図る考え方です。この考え方をベースに、ホーストは、植物由来の原料からその薬効を利用したシャンプーを開発し、1978年米国ミネソタ州にアヴェダを設立しました。

現在は、ヘアケア製品のほか、ボディケア、スキンケア、アロマ製品など600品目以上の美容関連製品を製造し、23の国と地域で販売しています。さらに、これらの製品を使ってサービスを提供するヘアサロンや全身のマッサージとトリートメントを行うスパの経営、ネットワークサロンと呼ばれる提携サロンのサポート事業、そして、美容専門学校の運営を行っています。

設立以来アヴェダは、全ての企業活動を通じて、命あふれる地球を大切に守り続けていくことを使命として、環境保全に努めています。

日本では、2000年に現地法人を設立し、2003年9月に旗艦店となる「アヴェダライフスタイル サロン&スパ 南青山」を東京都内にオープンしました。この施設は、小売店、ヘアサロン、スパ、およびカフェの複合施設で、現在は、世界に5店舗あるアヴェダの複合施設の中で、最も多い売上をあげるほどになっています。11月には、西日本地域の旗艦店として大阪市内にも同様の施設をオープンしました。

日本での事業は、上記の直営店の運営と、全国各地の美容室との提携によるネットワークサロンの展開で、約60名の従業員が働いています。ネットワークサロンでは、アヴェダのサポートのもと、同社の製品とサービスを提供しており、2006年11月現在112店舗まで拡大しています。

今回のニュースレターでは、日本独自の取り組みではなく、アヴェダ全体の企業理念と、製品づくりを通じた環境保全活動をご紹介します。

* * *

「アヴェダの製品は、母なる自然からもたらされるが、自然の犠牲のもとに製造されてはならない」--これが、創業者ホーストから受け継がれているアヴェダの企業理念です。

アヴェダの製品はすべて、花と植物のエッセンスを主成分とし、できる限りオーガニック農法あるいはバイオダイナミック農法で栽培されたものを探して原料に用いています。同時に、植物の薬効を科学的に研究し、理論的な裏づけを持って開発を行っています。

もちろん、植物や天然資源からの原料100%で製品を作ることはできませんが、その時その時の最新技術や調達状況の中で最良のものを選択するのが原則です。同じ品目であっても、常に成分や原材料が改良され、化学製品から、より自然なものへの置き換えが行われているのです。

例えば、シャンプーなどさまざまな製品に使われる界面活性剤の半分は、ブラジル産のババスナッツのオイルから採れた洗浄成分に置き換えられています。また、アマゾン地域のヤナワナ先住民族が栽培しているベニノキから抽出される色素を、口紅の染料として用いています。その他、石油成分が多く使われている保存料、染髪剤、パーマ液などを植物や天然のミネラルをベースにした成分に代えていくための研究など、数多くの研究を行っています。

新製品開発においては、製品アイデアが立案された段階で、環境持続性部門取締役、薬草医、社長の3名がアイデアを評価し、アヴェダの使命に反するような開発をストップするしくみを作っています。このしくみでは、採用される原材料が絶滅危惧種あるいは絶滅危急種でないか、持続可能な農業や採取方法によるものか、倫理的に調達されているか、成分の抽出工程や加工工程で環境や安全性に悪影響を与えていないか、容器包装は環境と安全性の基準を満たしているかなど、独自に定めたガイドラインに沿って多項目にわたるチェックが行われています。

現在、主要なヘアケア製品やスキンケア製品について見ると、天然素材由来の原料の配合割合は、ほとんどのアイテムが90%を超えています。また、使用しているエッセンシャルオイルの総重量の約75%は、オーガニック認定のオイルであり、植物成分の40%が、オーガニック認定の植物成分です。(2005年度)

* * *

アヴェダの事業は、花や植物の成分がなければ成り立ちません。どうすればこれ以上地球環境を悪化させず、今自然界にあるものを有効活用し続けられるのかは、同社にとって最も重要な課題です。

アヴェダは、地球環境の持続可能性の確保のために、生物多様性の保護が必要不可欠であると考えています。そして、そのヒントを世界各地の先住民族の暮らしに求め、彼らとのパートナーシップに力を入れています。先住民族は、多様な生態系と共生しながら暮らす知恵を持ち、植物を持続可能に採取して、育て、活用する知恵を持っているからです。

アーユルヴェーダのホリスティックな考え方、全てはつながっているという考え方により、アヴェダは、先住民族と、フェアトレードを超えたパートナーシップを構築しています。先住民族から原材料を調達することによって、彼らの伝統的な知恵を守り、経済的な自立を助けるだけでなく、教育や医療などの社会基盤の構築までを含めた一体的な取り組みを行っているのです。前述のベニノキも、ヤナワナ族とのパートナーシップから生まれた原材料の一例です。もう一つの例をご紹介しましょう。

鎮静効果のある豊かな香りのサンダルウッドのエッセンシャルオイルは、多くのアヴェダ製品に使われています。この原料である白檀は、かつてインドから輸入されていましたが、密猟組織が関与して不正に伐採されている場合があることが分かり、アヴェダは1997年にサンダルウッドを使用した製品の製造を中止しました。それから4年間、原産地が特定でき有機栽培された高品質の白檀を探し続け、西オーストラリアの先住民族、アボリジニが何千年も前から使ってきた質の高い白檀に出会いました。

アヴェダは、アボリジニのコミュニティが収穫した白檀を正当な対価で購入し、この白檀から抽出したエッセンシャルオイルを使って、製品の製造を再開しました。さらに、現地の環境団体などと協働して、原材料証明書の発行を政府に働きかけました。この証明書は、白檀の品質がいかに優れているかを証明するもので、これによって、生産者は他者とのビジネスにおいても自分たちの利益を守ることができるのです。

* * *

アヴェダは、「美と健康と地球環境の三位一体」というビジョンを掲げ、自らの使命の中に「美の世界のみならず、あらゆる世界においてリーダーシップと責任をもって、環境保全の模範となる企業を目指す」と謳っています。

ネットワークサロンとの提携にあたっては、アヴェダの環境保全に対する価値観を共有してもらうため、約40時間のスタッフ教育が行われます。その中では、製品の内容や使用方法だけではなく、製品一つひとつの背景にあるストーリーを含めて理解し、すべてのスタッフがアヴェダの使命を常に意識しながら行動することを求めています。

日本のアヴェダでも、今後、ネットワークサロンと協働して、お客様も参加できるようなワークショップやキャンペーンなどの環境保全活動を日本全国で積極的に行っていきたいと考えています。


(スタッフライター 西条江利子)

English  

 


 

このページの先頭へ