ニュースレター

2005年09月01日

 

JFS指標プロジェクトのご紹介

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JFS ニュースレター No.36 (2005年8月号)

持続可能な社会とは一体何でしょうか?

これは最も根源的な問いのひとつであり、答えは簡単ではありません。ある意味では私たちはまだその答えを模索する途上にあるといえるかもしれません。日本では90年代に企業の環境経営をはじめ、環境への取り組みが加速され、21世紀に入り、CSRも含め、環境を母として持続可能な社会へのパラダイムシフトの試行錯誤が様々行われています。

JFSではミッションのひとつの柱として「持続可能な社会を掘り下げて考え、日本のビジョンと、それを測るモノサシ=指標を創ること」を掲げており、指標プロジェクトという名称で、約1年半にわたり研究を続け、第1フェーズの成果がまとまりましたのでご紹介します。よろしければメールニュースのバックナンバーで4月号の「持続可能性指標について」を併せて参照してください。

持続可能性の定義

そもそもの原点は持続可能性の定義です。過去のものをベンチマークし、検討を重ねた結果、「 人類が他の生命をも含めた多様性を尊重しながら、地球環境の容量の中で、いのち、自然、くらし、文化を次の世代に受け渡し、よりよい社会の建設に意志を持ってつながり、地域間・世代間を越えて最大多数の最大幸福を希求すること。 」とJFSは定義しました。文章で定義するだけでなく、私たちはこれをフレームワークにすることが重要と考えました。
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/framework/pages/011076.html

持続可能性は1)資源・容量 2)時間的公平性 3)空間的公平性 4)多様性 5)意志とつながりの5つの要件から構成され、A. 環境 B. 経済 C. 社会 D. 個人 の4つの領域に分類されると考えます。これらに沿って日本固有の事情も考慮し、持続可能な日本のあるべき姿をAからDについて描きました。個人を社会と分け、4つに分類するというフレームは、私たちの友人である環境コンサルタント: アラン・アトキソン氏の業績を参考にさせていただきました。

持続可能な日本のビジョン

こうしたフレームの中で、持続可能な日本のあるべき姿を描きました。日本の全体像をNGOが描くのははじめての試みだったと思われます。
ビジョン:環境経済社会個人

指標の選別と測定

こうしてあるべき姿が描かれて、では2005年の日本はそうした社会とどの程度隔たりがあるのか、またあるべき社会に対して近づいているのか遠ざかっているのか、それを定量的、客観的に測定する「モノサシ」が必要となります。それを私たちは「指標」と呼びます。

さきの環境、経済、社会、個人の分野で、指標となりえるデータを約200収集しました。日本では政府機関でも持続可能性を扱う官庁がばらばらで、かつ横断的な調整部署も存在しないため、あちこちにばらばらに拡散したデータを集めるのはたいへん苦労しました。
http://www.japanfs.org/ja/jfsindex/index/pages/011055.html

ともあれこうしたデータ群の中から、既述したビジョンと定義の観点から、合計20個選び出したのが、JFS独自の「ヘッドライン指標」です。
20の指標は、それぞれ下記の5つのサブカテゴリーから選ばれています。
A.環境:1・生物多様性 2・温暖化 3・資源循環 4・水・土・空気 5・環境教育
B.経済:1・エネルギー 2・資源生産性 3・食糧 4・財政 5・国際協力
C.社会:1・安全 2・モビリティ 3・ジェンダー 4・伝統・文化 5・お金の流れ
D.個人:1・生活満足 2・学力・教育 3・コミュニティ参加 4・健康 5・生活格差

詳細はWEBを参照してください。
これら20のモノサシを使って実際に測定をしてみたところ、2050年を目指すべき年(満点)として、2005年の数値は33.5点。1990年の数値が41.3点であり、対90年比で約19%日本の持続可能性が後退しているという試算結果が出ました。

私たちは今回の一連の成果物を指標プロジェクトの第1章と位置づけており、今後中長期的にこのプロジェクトを進化、発展させていきます。
具体的には
1)各指標の精緻化
2)ヘッドライン指標の下にサブカテゴリーを設け、階層構造化
3)他国との国際比較
4)Asia for Sustainabilityへの発展
などを今後の活動の視野に入れています。

こうした活動を通して、持続可能な日本の全体像を可視化し、あるべき姿に対して日本は何をすべきか、その総合戦略策定の足がかりを問題提起することが大きな狙いです。


(多田博之)

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