ニュースレター

2005年02月01日

 

「人とクルマと自然との共生」 - 日産自動車

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JFS ニュースレター No.29 (2005年1月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第22回
 http://www.nissan-global.com/JP/index.html

自動車は、人や物の移動手段として経済の発展を促し、人々の生活を豊かにしてきました。日本では、人の輸送の6割以上、物の輸送の半分以上に自動車が使われており、自動車産業は、日本の基幹産業の一つに数えられています。
(出所:JFS指標 基礎データ「運輸」(11)旅客の輸送分担率、(12)貨物の輸送分担率 )

一方で、自動車は、地球環境に対して非常に大きな影響を与えています。私たちが自動車の恩恵を受けながら、環境保全との両立を図ることは、自動車メーカーのみならず社会全体が直面している重要な課題です。

日産自動車(以下、日産)は、1933年に創業、1960年代から次々に海外に生産拠点を展開し、現在は、世界17カ国・地域に生産工場を、190カ国以上に販売拠点を持つグローバル企業です。1999年から、フランスのルノーと提携を結び、世界の主要自動車グループの一つになりました。2003年の販売台数は297万台、売上高は7兆4,292億円にのぼり、全世界で12万人余りの従業員が働いています。

日産は、自動車を取り巻く様々な環境問題を認識した上で、取り組むべき課題として次の3つに焦点をあてています。第一に「地球温暖化抑制」、第二に「大気・水・土壌の保全」、第三に「資源循環」です。中でも、地球温暖化抑制を最も重要な課題と考え、走行時のCO2排出量を削減する自動車の技術開発に優先的に取り組んでいます。
http://www.nissan-global.com/JP/ENVIRONMENT/index.html

日本では、温暖化の一因とされるCO2の排出量の約2割を運輸部門が占めており、そのうちの約9割が自動車から排出されています。日産独自の試算では、全世界の日産車から1年間に約1億トンのCO2が排出されています。

自動車からのCO2排出量を削減するための鍵、それは「脱石油」です。多くの自動車メーカーが、クリーンエネルギー車の開発にしのぎを削っています。天然ガス、電気、アルコール、水素など、石油に変わるさまざまなエネルギー源が注目され、特に、再生可能エネルギーを利用した燃料電池自動車は、走行時に水しか排出しないことから、究極のエコカーといわれています。

しかし、それぞれの技術はまだ発展途上にあり、コストや実用性、インフラの整備も含め多くの課題が残っています。現在は、脱石油後の主役となる技術を予測できる段階にはありません。そのため日産では、燃料電池車を中心に、ハイブリッド車や電気自動車など可能性のある複数の技術を並行して研究開発しています。

自動車のCO2排出量の削減にとって大事なのは、クリーンエネルギー車の開発だけではありません。現在のガソリンエンジン車の改良、つまり燃費向上も大きな効果があります。

日産は、日本国内で、国が定めたガソリン乗用車の「2010年燃費基準」を2005年に先行して達成することを目標とし、2003年には、対象となる車両の重さの区分のうち、過半数で達成しました。

日産は、燃費を向上させるために、低燃費エンジンや高効率トランスミッションの開発、車両の軽量化などの努力を積み重ねてきました。また、街中で頻繁に停車したり、荷物を積んだり、エアコンを使ったりなど、実走行での燃費(実用燃費)を上げるための技術開発にも力を入れています。こうした取り組みにより、最近発売したコンパクトカーでは、平均実用燃費で、前型車に比べて約20%向上しています。

第二の課題である「大気・水・土壌の保全」についても、日産は、排出ガスの清浄化技術にいち早く取り組み、2000年、当時世界で最も厳しい排ガス基準であった米国カリフォオルニア州大気資源局(CARB)から、初めてPZEV(Partial ZeroEmission Vehicle)として認められた「セントラCA」を発売しました。

この技術は、その後の日産の排ガス清浄化技術を牽引し、コストの引き下げに成功し、低排出ガス車の普及につながりました。今では日本で販売している新車の90%以上が、国の定めた「超-低排出ガス車(U-LEV)」の認定を取得しています。そして、2005年度末までに新車の80%以上を、いっそう厳しい規制である「SU-LEV」とする、という新たな目標を掲げて、排出ガスのクリーン化に取り組んでいます。

「超-低排出ガス車(U-LEV)」とは、平成12年(2000年)の排出ガス規制適合車に対して窒素酸化物と炭化水素を75%低減させた車のことです。U-LEVの基準値は、約30年前の1973年の規制の約1/100のレベルに達しています。そして、「SU-LEV」は、平成17年(2005年)の排出ガス規制適合車に対して窒素酸化物と非メタン炭化水素を75%低減させた車のことで、U-LEVの約半分の排ガスレベルに相当する世界で最も厳しい規制です。

日産の環境への取り組みの特徴は、一部の特別な車だけではなく、実用性の高い技術を、より多くの車に導入し、手頃な価格で提供することに重点をおいている点にあります。環境性能だけが飛び抜けて高い自動車を作っても、生産台数が伴わなければ、社会全体での環境負荷削減効果はあまり大きくないからです。それよりも、環境に配慮しかつ基本性能でも満足度が高く、多くのお客さまに買ってもらえる自動車を作る方が、全体として見ると、環境保全効果が大きいと考えているのです。

グローバル企業としての日産の責任は、日本や欧米で培われた燃費向上や排ガス清浄化のなどの技術を、今後自動車の需要拡大が予測される発展途上国での自動車生産に生かしていくことです。また、高い生産性を誇る日産独自の生産方式を、より多くの地域へ展開していくことです。生産効率の向上は、人件費とエネルギーコストを削減できると同時に、環境負荷も削減できるからです。

第三の課題「資源循環」について、日産は早くから問題意識をもっていました。1996年に、使用済み自動車のリサイクルを専門に扱う部署を設置し、実際の解体現場を理解するための実証研究を始めました。この取り組みから、リサイクルを考えた解体しやすい新型車の設計ガイドラインや中古部品の販売事業が生まれています。

生産現場での取り組みに加えて、日産は、お客様との接点である販売会社の環境配慮も推進しています。ISO14001に準じた独自の環境マネジメントシステム「日産グリーンショップ」の認定を2000年から開始し、2002年に日本国内の全販売会社218社が認定を取得しました。

日産グリーンショップの審査項目には、販売会社での使用済み自動車の適正処理、廃棄物の適正処理とリサイクル、省エネ活動などが含まれます。この制度によって、日産グループは、生産から販売までが一丸となって、資源循環をはじめとする環境保全の目標達成に取り組んでいます。

日産は、これから持続可能な社会に向かって、自動車の生産には多くの制約条件が課されていくと予測しています。希少金属や化石燃料などの資源の枯渇、CO2排出量や排出ガスのいっそう厳しい規制などです。 このようなリスクに対応しうる能力を持たなければ、企業が成長していくことはできないだろうと考えています。

この認識を踏まえて現在日産は、カルロス・ゴーン社長のもと、中長期を見据えたグローバル戦略を策定中です。---- 環境保全はもとより、安全性や快適性、経済性や公平性を配慮した持続可能なクルマ社会とは、どんな姿なのか? その社会において日産はどのような新しい価値を生み出すことができるのか? その実現に向かってどのように資源を配分していくのか? ---- 

非常に難しい課題ですが、「人とクルマと自然が共生」できる社会を目指して、日産の意欲的なチャレンジは進行中です。


(スタッフライター 西条江利子)

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