ニュースレター

2004年10月01日

 

「お客様と一体になって - 総合エネルギー企業への挑戦」 - コスモ石油

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JFS ニュースレター No.25 (2004年9月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第19回

石油は、現代の経済社会において中心的な地位を占めるエネルギーです。BP世界エネルギー統計(2002年版)によると、石油は世界の一次エネルギーの約40%を占めています。日本では石油依存が更に顕著で、一次エネルギーの約50%(うち、99.7%は輸入)を占めています。世界で二番目の経済大国(世界全体のGDPの約14%)である日本は、石油消費(世界全体の7.2%、共に2001年)も世界で二番目に大きいのです。

持続可能な社会への移行には、エネルギーの中心が非再生可能エネルギーから、再生可能エネルギーに移ることが必須ですが、これは一夜にして実現できるわけではありません。エネルギーのベストミックスは、技術、インフラ、安全性、経済性、安定性、地域性といった様々な要因の絡み合いに依存しています。鍵は、1.エネルギーの安定供給を果たしつつ、2.環境負荷の少ないエネルギーをいかに増やしていくか。この長期的、段階的な道筋を、供給者、消費者、そして社会がいかに描いていくかにあるといえるでしょう。

この挑戦に取組んでいるのが、業界三位(燃料油売上げ)のシェアを占める石油精製・元売企業のコスモ石油です。同社は、「環境で選ばれるコスモ石油-真の環境先進企業を目指して」をスローガンに、「石油企業」から「総合エネルギー企業」への進化を掲げています。岡部敬一郎会長は、「石油は人類に様々な恩恵をもたらしてきた一方、その大量消費が地球環境に負担を強いてきた」ことを認め「エネルギーの供給とその消費によってもたらされる環境負荷の低減は、持続可能な社会づくりのキーである」としています。この認識のもと、同社は大きく分けて三つの活動を展開しています。一つは、現代経済社会の中心にある石油製品のライフサイクル全体での環境負荷削減。二つ目は、お客様と一体となった環境保全活動。そしてもう一つは、より環境負荷の少ないエネルギーの順次開発・供給です。

まずは一つ目の活動から。コスモの業務は主に、1.産油国での原油生産、2.日本への輸送、3.製油所での精製、4.サービスステーション(SS)への輸送の各プロセスがあります。まず同社は、全段階で環境負荷を把握し、ISO環境マネジメントシステムの目標に基づいた着実な低減に努めています。ここでの成果は着実に上がっています。温暖化防止の面では製油所での省エネを進め、02年度にはエネルギー消費量(原油換算処理量あたり)を90年比で9.7%削減を達成。04年度の9.2%削減を前倒しで達成しました。また同年の産業廃棄物最終処分量も、90年度比で81%削減(02年-04年度平均)の目標に対し、83%削減を達成。他にもガソリンや軽油の品質改善として使用時の硫黄酸化物排出削減が進みました。

こうしたプロセスの環境負荷低減を進めるなか、同社は事業にまつわるCO2排出量をライフサイクル全体で計算してみると、90.5%が「お客様による消費段階」で発生していることがわかりました。では、消費時での排出量をいかに減らすか。コスモは、ここに消費側と一体となり中長期的で包括的な解決を探る機会を見出そうと模索しています。これが二つ目の切り口です。

この模索から、02年4月、コスモは自社サービスステーション(SS)で使えるクレジットカード「コスモ・ザ・カード・エコ」を発行しました。このカードの会員となると、毎年500円の寄付金をコスモ石油が管理する「エコ基金」に預けることができます。そして、コスモ側もカードの売上げの一部を基金に拠出し、合計が地球温暖化防止をテーマとする途上国などの環境保全・国内外の教育プロジェクトに役立てられるという仕組みです。基金のスタッフが、支援を行う現地の方々の声を聞き、NPO・NGOなどのパートナーと検討を行い、実際の効果が継続的に期待できるようプロジェクトを推進します。03年度には、約7万5000人がこのカードの会員となり、パプアニューギニアやソロモン諸島での熱帯雨林保全プロジェクト、国内での環境教育支援プロジェクトなどを実施しました。
http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/eco/index.html

熱帯雨林保全プロジェクトの経過は、石油消費がもたらす温暖化への影響を率直に語りかけ、途上国政府と一体となって活動する様子を紹介するテレビCMを通して多くの人々に報告されました。この活動は01年度までは同社が単独でNPO・NGOと協力して行っていたものです。「02年度から基金を通して消費者と一緒になって活動したことで、企業とお客様とNPOの相乗効果が生まれ、社会的影響力の高い活動を展開することができた」と岡部会長は述べています。

また、これに関連して「CO2フリーガソリン」が生まれました。同社は02年度と03年度、オーストラリアの会社から合計71,489トン分のCO2排出権を取得しました。その排出権の一部を、消費者のガソリン使用によって発生するCO2に充当し、「CO2フリーガソリン」とする企画をコスモ・ザ・カード「エコ」の会員を対象に02年度、03年度の12月に行っています。CO2排出量に対する直接の効果としては、この企画の期間中(02年12月)に会員が給油したガソリンと軽油、合計11,763klから排出された合計27,423トン分のCO2が、オーストラリアのユーカリ林に吸収された計算になります。またこの排出権分は、「二酸化炭素吸収証書」としてコスモ石油が関わるイベントにおいて1トンあたり500円で03年1月から販売しているほか、イベントに参加できない個人や、環境啓発に証書を活用したいという他企業からの要望を受け、04年2月からホームページ上での販売も始めています。04年度はコスモ石油も協賛するフォーミュラーニッポンに排出権を無償提供し、全戦でマシンの排出分をCO2フリーにしています。販売分の売上げは同社の「エコカード基金」に加えられ、環境貢献活動に役立てられています。こうした活動の成果について、「排出権を使ったこうした取組を草の根的な地球温暖化防止の環境啓発と位置付けています。JAFの機関紙や車専門誌などにも取り上げられるなど、特に車愛好家からの関心が高いです」と同社でCSRを推進する伊達英理子氏は述べています。

このコスモ・ザ・カード「エコ」は02年、クレジットカードとして初めて財団法人日本産業デザイン振興会の「グッドデザイン賞」を受賞しました。その理由について、同社は「お客様の間で高まりつつある「地球環境のために何かしたい」というニーズと、当社の「地球環境を守りたい」という企業姿勢を結びつけ、石油製品の購入を通じた環境保全活動への参加を実現させたカードのコンセプトが評価された」と述べています。他にも、全国FM局とタイアップして広く社会に環境保全を呼びかける「コスモ アースコンシャス アクト」の一環として、広報媒体を通じて有志を募り、毎年日本各地の約40ヶ所の海や山、川、公園などで清掃活動を行う「クリーンキャンペーン」を続けています。

最後に、より環境負荷の少ないエネルギーの開発・供給はどうでしょう?「持続可能な社会の実現には、エネルギーが、より環境負荷が低く、かつ安定的に、そして社会が負担できるコストで供給される必要があります。コスモ石油はこれらのバランスを取ったエネルギーのベストミックスを模索しています(伊達氏)。」その取組の一環として行っているのが、天然ガスの活用と、燃料電池の開発です。天然ガスは、使用時の環境負荷が少ないというメリットがある一方、LNGとして供給する場合は大量のエネルギーを必要とします。液化し、マイナス162℃という極低温状態を保つ必要があるためです。しかしガスのまま供給するには、ガス田からのパイプラインが必要になります。そこで同社は、天然ガスを化学反応によって液体燃料に変える技術(GTL:Gas to Liquid)の開発を進め、02年度に日本で初めてGTL油を生産。商業化に向け更に研究中です。

また燃料電池事業では、国家機関や財団からの委託を受け、LPGや灯油などの石油系燃料から製造した水素を使用する「定置型燃料電池システム」を開発中です。2002年度には灯油を原料として、自社開発の改質触媒を用いて水素製造装置のデモ運転を実施。2003年3月には、経済産業省の支援するプロジェクトに参加し、燃料電池自動車用「水素供給ステーション」を横浜に開設しました。今後は、燃料電池車への水素供給とともに、普及啓発活動にも力を注ぐといいます。「様々なエネルギー源の中で、最も環境影響が低い再生可能エネルギーについても、今現在は安定性や経済性の面でペイできるところまで技術開発が進まず、まだ何が主流となるか分からないのが現状です。そのなかでコスモ石油は、風力発電の事業化を進めるほか、グループ会社ではバイオ燃料製造のFS調査を行うなど、様々な試みに着手し、来るべき社会に向けて経験を積んでいるところです(伊達氏)。」持続可能な社会に向けて総合エネルギー企業への進化を目指すコスモ石油の挑戦はこれからが本番です。


(スタッフライター 小林一紀)

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