ニュースレター

2004年10月01日

 

日本の「環境首都」を選ぶコンテスト、3年目の成果と展望 - 環境首都コンテスト全国ネットワーク

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JFS ニュースレター No.25 (2004年9月号)

環境首都コンテストの概要

「環境首都」の名にふさわしい自治体を、環境NGOの視点から選び出すという日本の環境首都コンテストは、2001年に始まりました。お手本となったのは、1989年から98年までの10年間、ドイツで実施された「自然・環境保護の連邦首都」を選ぶコンテストです。このコンテストは持続可能な社会づくりに向けて、自治体間の競争と環境対策の活性化を促進し、ドイツ社会の環境意識の高まりに大きな影響を及ぼしたといわれています。

1989年に環境首都となったエアランゲン市をはじめ、1992年のフライブルグ市、1996年のハイデルベルク市など、ドイツではさまざまなエコ・シティが誕生し、日本からもたくさんの視察者が訪問しています。

日本の環境首都コンテストも、2001年から2010年まで10年間の実施が予定されています。このコンテストによって「トップランナー自治体」が明らかになることで、他の自治体も刺激を受け、日本の持続可能な社会への取り組みが加速することでしょう。

「環境首都」の称号は、エントリーした自治体が回答した15項目約80問の質問票の配点を加算し、それが総合で1位であることのほか、厳しい基準をすべてみたす自治体に与えられることになっています。総合で1位となっても、点数が主催者が定めている条件(総合点が満点の70%以上)に達しないなどの理由から、この称号を獲得した自治体はまだありません。

評価にあたるのは、NPO法人環境市民を中心とした11の環境NGO(2004年現在)による「環境首都コンテスト全国ネットワーク」です。コンテストの実施にあたっては、単に自治体の環境問題への取り組み状況の順位付けを目的としたものに終わらないよう、質問内容の設定が大きな課題でした。

そのため、まずドイツ、北欧、日本の先進自治体の調査を5年間行い、ドイツからコンテストを主催した「ドイツ環境支援協会」のコーディネーターや環境首都に輝いた市の環境担当者を招くなどして、日本の実情に合わせた調査内容を検討しました。2001年春には全国45の自治体の協力のもとでプレコンテストを実施。これら予備調査の結果をもとに、第1回環境首都コンテストが実施されたのです。

コンテストは環境首都を選ぶだけでなく、総合順位上位10位まで、人口別順位はそれぞれ上位2位まで表彰されます。また、地球温暖化と住民参画の部門別表彰が、人口規模別におこなわれます。コンテストの結果は、他の自治体との比較のなかで自己点検や今後の施策に役立つように、毎回詳細な報告書としてまとめられます。

第1回のコンテストでは、上位5位までを大都市が占めましたが、第2回では人口規模の格差が点数差に現れないよう、設問の構成と配点に配慮されました。第3回では施策や計画の中身、実施による効果を捉えられるよう、さらなる設問内容の充実が図られています。


第3回環境首都コンテストの結果

2004年3月、コンテストの第3回の結果が発表されました。参加自治体数は83自治体で、うち過去3年連続参加が約半数を占めています。

2003年度の評価項目は以下のように分けられています。
A:ローカルアジェンダ21、環境基本条例・環境基本計画(8設問、100点)B:環境マネジメントシステム(EMS)の構築(4設問、50点)
C:住民とともにチェックする仕組み、情報公開(5設問、55点)
D:率先行動・エコオフィス(9設問、60点)
E:国内外の自治体交流(4設問、40点)
F:職員の資質・政策能力の向上と環境行政の総合化・予算(4設問、95点)G:市民のエンパワーメントとパートナーシップ(5設問、80点)
H:環境学習(5設問、80点)
I:自然環境の保全と回復(9設問、70点)
J:健全な水環境(5設問、40点)
K:風土を生かした景観形成と公園づくり(7設問、50点)
L:エコロジカルな交通政策(3-5設問、55点)
M:地球温暖化防止・エネルギー政策(9設問、75点)
N:ごみの減量化(4設問、60点)
O:環境に配慮した産業の推進(3設問、60点)
以上の15項目に自由記述(3例まで30点)、先進事例加点20点を加算し、満点は1,020点。

評価は質問票の集計のみではなく、実際に担当者が現地に出向いて視察やヒアリングを実施した結果をふまえて判断されます。この結果、2003年度も環境首都の条件を満たす自治体は現れませんでしたが、総合で人口約106,000人の岐
阜県多治見市が第1位となりました。

総合順位 上位10位
第1位 岐阜県多治見市
第2位 熊本県水俣市
第3位 広島県広島市
第4位 愛媛県松山市
第5位 長野県飯田市
第6位 兵庫県尼崎市
第7位 東京都板橋区
第8位 愛知県新城市
第9位 神奈川県大和市
第10位 熊本県熊本市

http://eco-capital.net/modules/project/ecocap/report3.html

入賞した自治体には共通する特徴があります。ひとつは、首長や自治体職員が、政策立案能力や遂行能力を向上することに努め、タテ割り行政の弊害を改めるシステムの構築に取り組んでいることです。

総合1位の岐阜県多治見市では、市の事業の優先順位や財源確保を議論する「政策形成ヒアリング」を実施して、環境基本計画が反映されるような事業ができるしくみをつくりました。その成果は、太陽熱利用や屋上緑化、雨水利用、シックハウス対策など、環境に配慮した保育園や学校が誕生したことに現れています。

もうひとつの特徴は、住民参画に本格的に取り組んでいることです。東京都三鷹市の「市民プラン21会議」をはじめ、埼玉県志木市の「志木市民委員会」、神奈川県大和市の、市民とともに制定した「大和市新しい公共を創造する市民活動推進条例」など、いずれの取り組みも、市民の提案が事業として自治体の予算に反映されるしくみにつながっています。


3回を終了して見えてきたこと

10年の予定で実施される環境首都コンテストですが、主催者は、3回を終了した時点で次の3点が見え始めているといいます。まず、コンテストの趣旨が、環境自治体づくりをめざす市区町村から受け入れられ、各地のNPO、メディア、大学等から関心を持たれ始めているということ。2つ目は、参加自治体の中で、首長が「環境首都をめざそう」と宣言したり、コンテストを環境基本計画の指標や目標として使おうとするなど、「環境首都」を目標と考える自治体が現れてきていること。3つ目は、各地の自治体はすでに、主催者が予測していた以上に先進的な事例や積極的な取り組みを実施していることが、回答やヒアリングを通じて明らかになってきたことです。

第4回の環境首都コンテストは、2004年9月から全国の自治体に公募の案内が送られます。日本の自治体は現在、市町村合併で大きく枠組みが変わろうとしていますが、たくさんの自治体がこのコンテストに参加することによって、小さな自治体が取り組んできた先進的な事例が評価され、合併後の自治体に引き継がれることが望まれます。

ドイツではコンテストに参加した自治体の多くが、環境首都に選ばれることや上位入賞することよりも、自らの環境対策の長所と弱点を明らかにし、他の自治体と比較できることが参加する大きな動機になっていると答えているそうです。日本でも、このコンテストの存在そのものが、社会のエコ・イノベーションの加速をもたらすことが期待されています。

参考URL
http://www.kankyoshimin.org/ (NPO法人環境市民)
第1回-第3回の結果は、以下をご参照ください。
http://eco-capital.net/modules/project/ecocap/

http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027208.html(JFSニュースレター)


(スタッフライター 八木和美)

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