ニュースレター

2004年09月01日

 

「オーガニックなだけではありません - 綿から始まる快適生活 」 - メイド・イン・アース

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JFS ニュースレター No.24 (2004年8月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第17回
http://www.made-in-earth.co.jp/

メイド・イン・アースは、1995年に立ち上げられた、オーガニックコットン100%を素材とした製品と、天然素材のみを成分としたせっけんを扱うブランドです。通常のコットン(綿)を栽培・紡績・加工する工程では、多量の化学薬剤が使用されています。オーガニックコットンとは、化学薬剤を一切使わずに有機栽培された綿のことをさします。

メイド・イン・アースの製品は、公的認証機関により認証を受けた綿だけを素材に、加工の段階でも化学処理をせずにつくられた、タオル類、寝具類、衣類、ベビー用品、雑貨類などです。コンセプトは、「赤ちゃんからシニアの方々まで、年齢性別を超え、かぎりなく素肌に素直に」。現在9名のスタッフが働いており、商品は日本各地の自然食品店や雑貨店、およびウェブサイトを通して販売しています。

代表の前田さんは、1989年、広告プロダクションを経て広告企画を制作する株式会社チーム・オースリーを立ち上げたあと、オーガニックコットンに出会いました。初めて出会ったやわらかで心地よい風合いに心を奪われると同時に、「天然素材の代表のようなイメージをもっていたコットンが実は化学薬剤づけであることにとても驚いた」と言います。実に、ある報告では、米国で使用されている殺虫剤のうち約25%がコットン栽培に使用されているとされています。

例えば、種の段階で防虫剤、植えてからは除草剤と虫を駆除するために農薬、発育のために化学肥料が使われます。そして綿の実がはじける夏には、枯葉剤などを空中散布し、人工的に葉や茎を枯らして刈り取ります。葉や茎が残ると、その葉緑素で白い綿の表面に緑のシミが付きランクが下がってしまうからです。糸や生地にする紡績でも、糸切れを防ぐために化学糊を使い、加工工程でも、染色しやすいようにコットンの本来の油分を除去し、化学染料、防縮加工剤、柔軟仕上げ剤を投入します。

「大量生産や生産の効率化、品質の均一化などのために化学薬剤を多く使うのです。本来、天然なら色や雰囲気がまったく同じ綿が大量にできるわけはありません。あるブランドのタオルを買ったら、いつ買っても、同じ色、同じ肌ざわりだというのは、やはり人工的だからできることなのです。よく考えれば当然なのに、私たちは気づかないのです」と前田さんは語ります。

オ-ガニックコットンを作るには、化学肥料の代わりに有機肥料を、除草剤の代わりに人による除草作業を、農薬の代わりに昆虫などによる害虫駆除を行います。更に刈り取りは、茎や葉が自然に枯れる秋まで待ちます。紡績も糸切れを防ぐために、機械の速度を通常の半分ほどのスピ-ドに落として行います。加工工程でも、化学薬剤の代わりに蜜蝋、小麦粉、菜種油、果汁などを使います。

前田さんは「本物の心地よさ、色合い、風合いを伝えたい」と言います。例えば染色をしない天然のコットンには、綿の種類によって、きなり(クリーム)、茶、グリーンの3色があります。「どれもナチュラルでとても素敵な色です。いつも一定の色が出るわけではありませんが、それが自然なのです」。

また、化学物質を使わず自然のエネルギーだけを受けて育ったオーガニックコットンは、驚くほど柔らかい風合いをもっていると言います。「お洗濯をした後のタオルは、柔軟剤を使用しなくても2倍ちかくに膨らみ、ぬいぐるみのようにふわふわのタオルになります。この天然そのものの感触を、私たちはとても大切にしています」。

ただ、オーガニックコットンの栽培・加工には人手と費用がかかり、コストと価格は通常より高くなります。そのため、ある報告によると、現在流通量は全世界の綿生産量のわずか0.5%ほど(国際的な基準に合うオーガニック認証を受けたものは0.1%以下)、年間に約80万トンの綿製品を消費している日本では、0.1%に満たないほどです。しかし、同社の製品は、アトピーやアレルギーに悩まされてきた肌のデリケートな方などを中心に、ギフトとしても人気を得つつあります。

同社の製品の特徴に、遊び心を生かしたデザインがあります。画家で詩人の福田勝(ふくだまさる)氏が、バリ、ネパール、ベトナム、マダガスカル、インドなどを旅しながら絵や詩を描きつつ生み出す様々なキャラクターやデザインを取り入れています。「遊び心のあるデザインを通して、肌や環境に興味をもっていない人にも手にとってもらえる。そこに環境の情報もそっと添えていれば、結果的にいろいろな気づきがうまれてくる」と語ります。

他に、もう一つ広く支持を得ている商品に女性用「布ナプキン」があります。あまり知られていないことですが、現在流通している生理用ナプキンには、石油系化学物質(表面にはポリエステルやポリプロピレンなどの不織布、吸収剤には綿状パルプや高分子吸収材)が使われており、これらの化学物質が子宮内膜症など女性の体へ影響を及ぼす懸念もぬぐいきれません。同社の100%オーガニックコットンのナプキンは実際に使っている方からとても好評だそうです。
製品写真 http://www.rakuten.ne.jp/gold/earth/index.html

現在、メイド・イン・アースでは、日本の在来種の有機栽培綿を使った新商品「有機和綿十割"わ"」の開発に力を入れています。現在、日本の綿の在来種は絶滅に近い状態で、全てを輸入ものに頼っている状況にありますが、明治時代中頃までは200種もの在来品種があり、綿の100%を自給していました。

世界には多くの綿の品種がありますが、現在日本人が普段着用している綿製品の素材は米綿やエジプト綿などの新大陸綿です。しかし、適地適作といって、その土地の気侯・風土に合った作物・品種を栽培することで自然に無理なく生活に必要なものが得られます。日本綿は少し厚手ですが、保湿性・吸湿性の良い衣服が得られます。

国産の綿はコストは高くなりますが、外国から輸入する場合の環境影響を考えても、日本の綿を絶滅から守るためにも、和綿を普及させようと努力している農園があります。「有機和綿十割"わ"」は、その農園と協力をし、栽培者、紡ぎ手、織り手、販売者、そして使用者が顔の見える関係で製品を作ろうとしています。将来の製品使用者が、綿の栽培の段階から一定の積立金を通して製品づくりに参加できる「コットン・トラスト」などのアイデアも検討中ですとのこと。

「それぞれの土地に適している綿があるはず。将来は、東アジア、東南アジアの農家の方と協力して、アジアに適した綿を栽培できれば」と前田さんは語ります。単にオーガニックなだけでない、カラダにもココロにも心地よい快適生活を届けるメイド・イン・アースの挑戦はまだまだ続きます。


(スタッフライター 小林一紀)

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