ニュースレター

2004年04月01日

 

生活者の視点からの食と環境問題への取り組み - 生活クラブ生協

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JFS ニュースレター No.19 (2004年3月号)

日本には多くの消費生活協同組合があり、「生協」や「コープ」と呼ばれて親しまれています。生協の原点は、産業革命まっただ中のイギリスで、1844年にロッチデールの労働者たちが1年間をかけて資金を積み立てて組合を設立したことがはじまりでした。その後、イギリス全土から世界に協同組合は広がっていきました。現在、世界の協同組合の連合組織であるICA(国際協同組合同盟)には約100カ国が加盟しています。

日本に初めて生協が誕生したのは1879年のことでした。日本生活協同組合連合会によれば、2002年現在、各地にある地域生協、職域生協、学校生協、大学生協、医療生協などの合計数は571、組合員数は約2,177万人です。これらの人たちが、「出資」「利用」「運営」を組合員自身の手で行いながら、自らのくらしを守るための活動をしています。


共同購入というもうひとつの経済活動

生活クラブ生協は、このような生活協同組合のひとつとして、1965年、東京都世田谷区で200人の主婦が牛乳のまとめ買いを始めたことから出発しました。

まとめて買えば経費が少なくなるから、安くなる。そんな発想から共同購入が始まったのです。

1968年に生活クラブ生協(東京)が設立され、日本各地に生活クラブの輪は広がっていきました。それぞれ地域で独立した生協ですが、2003年現在は、北海道から愛知県まで全国22の地域生協の組合員258,808人が、事業連合をつくって、食料・日用雑貨・衣料・図書などの開発・仕入れ・管理・検査・物流・共済事業を行っています。
http://www.seikatsuclub.coop/

生活クラブの共同購入には、班配送、戸別配送、 デポーの3つの配送形態があります。共同購入が成り立つには、人と人との信頼関係や助け合いの精神が必要となってきます。組合員は、共同購入というシステムからたくさんのことを学ぶこととなりました。

生活クラブでは扱う商品のことを「消費材」と呼びます。市場にあふれる商品は必ずしもそれを使用する側の立場に立ってはいないことを学んだことから、商品が抱える問題点を生活者の視点で見直し、同じ疑問をもった生産者と一緒に、消費する側の価値から商品を作るしくみを作ったのです。見栄えをよくしたり、原材料の品質をごまかしたり、日持ちをよくするために食品添加物を多用するということをせず、流通を透明にしたものが「消費材」です。


「疑わしいものは使わない」 「情報は公開する」という原則

共同購入はさらに、水質汚染の原因となる合成洗剤や安全性の証明がない遺伝子組み換え食品の不買運動、容器・包材の環境ホルモン対策やリユース・リサイクルの運動にもつながってきました。

遺伝子組み換え食品への対策として、1997年に、消費材に遺伝子組み換え作物・食品は取り扱わないことを基本とすること、やむを得ず使用する場合は、情報を公開して取り組むことを決定しました。2000年3月には「ストップ!!GMO宣言 スタート集会」を開き、一貫して反対運動を展開しています。

1993年5月からは消費材に使用しているビンを再使用するシステム(グリーンシステム)の取り組みもはじまりました。それまでは商品ごとに異なるビンを使っていましたが、15品目の調味料を3種のビンに規格統一し、使い終えたビンを再び生産段階に戻すしくみを作ったのです。生活クラブ・びん商・生産者の三者による共同事業である「びん再使用協議会」が運営にあたっています。

2000年には、一部を除き牛乳もリターナブルびんに切替えられました。牛乳のプラスチックキャップや配達用のピッキング袋もリサイクル回収することで、「ごみを出さない暮らし方」を進めています。


市民の声を政治に反映させる

2003年8月、生活クラブ生協(東京)は、東京都が発表した「『東京都食品安全基本条例(仮称)』の制定に向けた考え方」に対して意見書を提出しています。新たに策定される「食品安全推進計画(仮称)」に、食品の子どもガイドラインを作成することや、予防原則の考え方を取り入れた食品の安全性評価などを提案して、条例制定に意見を反映させていこうとするものです。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/jourei/index.html

このような市民の声を政治に反映させる取り組みは、合成洗剤を追放し、石けん運動を進めた運動から始まったものです。市民の声を政治に反映させるには、政治への参加と変革が必要であると、地方議会に議員として代理人を送るネットワーク運動が広がりました。現在、全国各地に「生活者ネットワーク」「市民ネットワーク」が広がり、141人の代理人が地方議会で、環境保全や福祉制度の充実などの政策の実現に取組んでいます。
http://www.seikatsuclub.coop/


国際的な評価

1989年、生活クラブはライト・ライブリフッド賞の名誉賞を受賞しました。これはスウェーデンの「もうひとつのノーベル賞」といわれるもので、人間の健康と環境にこだわり、生活に必要な品物をつくってきた生活クラブの取り組みが、国際的に高く評価されたのです。

1995年には、国連設立50周年を記念して企画されたプログラム「われら人間:50のコミュニティ賞 」を受賞 。世界の中の、50の模範的なコニュニティのひとつとして表彰されました。生活クラブは「環境保護と持続可能な発展の部門に関連した活動において成功したこと」で選ばれています。

「食」は私たちのくらしの中で欠かすことのできない大切なものですが、近年の日本では、食料自給率のさらなる低下や安全性のゆらぎなど、さまざまな問題が表面化してきました。環境問題は私たちひとりひとりの生活と直結しています。私たちが「何を」「どのように」買うのかによって、地球環境に与える負荷の種類や大きさを変えることができる、そしてその過程で社会や世界にも大きな影響を与えることができることを、生活クラブの取り組みは教えてくれるのです。

(スタッフライター 八木和美)

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