ニュースレター

2003年09月01日

 

食糧もエネルギーも地域で:各地に広がる菜の花プロジェクト

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JFS ニュースレター No.12 (2003年8月号)

日本ではよく天ぷらや揚げ物を食べます。日本で使われている植物油は、菜種油が約40%、大豆油が約30%、パーム油が約15%で、その他コーン油、こめ油、ゴマ油、ヤシ油、べに花油、オリーブ油など、13-14種類もあります。

日本全体で、2001年には約250万トンの植物油をつかっています。その半分強はマーガリンやマヨネーズ、ドレッシングなどの形で消費し、外食などの業務用で使用されるのが約28%。家庭の台所で使う植物油が約20%ですから、ひとりあたり年間に4キロほどの植物油を家庭で消費している計算になります。

かつて日本は、国内で使う植物油(主に菜種油)はすべて自国で生産していました。しかし、昭和30年代後半の油脂原料の輸入自由化や政府の農業政策のために、生産量は激減し、どこにも広がっていた菜の花畑は姿を消し、現在の国産の菜種生産量の統計は、少なすぎて数えられないという「1000トン未満」です。植物油の自給率は4%にすぎません。

国内で消費される年間約250万トンの食用油のうち、約45万トンが廃油になります。そのうち家庭から出る廃食油が約20万トンです。ひとり平均1.5キロの廃食油を毎年出している計算です。大量に出る業務系の廃食油は回収しやすいので、回収ルートが確立されていて、ほとんどが回収され、家畜用の飼料、塗料や燃料などにリサイクルされています。その一方、家庭からの回収は1トンほどにすぎないといわれています。

かつては、流しから廃食油をそのまま流す人が多かったのですが、廃食油200ミリリットルを流しから川へ流した場合、魚が住める水質に戻すためには、浴槽(330リットル)132杯分の水が必要だといわれるほど、水質汚染につながってしまいます。現在では、廃食油は新聞紙や凝固剤に吸わせてゴミとして焼却する家庭が多く、せっけんにリサイクルする運動も広がっています。

また、「同じ油なのだから、自動車用の燃料にリサイクルしよう」という取り組みも広がってきました。たとえば、東京の染谷商店や滋賀の油藤商事、東北エコシステムズ、石橋石油では、廃食油を回収して、プラントでバイオディーゼルに変換して、自社で使ったり、販売をしています。バイオディーゼルは、硫黄酸化物はゼロ、黒鉛も通常のディーゼル燃料の3分の1以下の大気にも健康にもやさしい燃料です。今走っているディーゼル車にそのまま使うことができます。
http://www.vdf.co.jp/
http://www.aburatou.co.jp/
http://www.1484c.com/

ハンバーグレストランの「びっくりドンキー」では、廃食油をバイオディーゼルにして、自社の配送車の燃料として使っています。
http://www.bikkuri-donkey.com/

廃食油を自動車用燃料として使うことができれば、川も汚さず、ゴミにもならず、大気汚染物質も減らし、その分海外からディーゼル用の油の輸入を減らすことができ、エネルギー自給率を少しでも上げることができます(日本のエネルギー自給率は約20%、自動車用燃料はすべて中東など外国に頼っています)。

そして、食用油そのものから地域で生産をして、食用油→廃食油→回収→燃料のリサイクルの輪を回している地域も増えています。このようなプロジェクトはよく「菜の花プロジェクト」と呼ばれます。

滋賀県では、愛東町や八日市、今津、新旭などいくつかの自治体で、廃食油をバイオディーゼルにし、公用車などに使っているほか、菜種の栽培も広がりつつあります。この菜の花プロジェクトはいまでは全国に広がっています。2003年4月に広島県大朝町で開かれた第3回菜の花サミットには、北は函館から南は屋久島まで、全国から46のプロジェクトが参加しました。

琵琶湖にはバイオディーゼルで走る「湖上タクシー」があります。小学5年生が乗る琵琶湖の環境学習船にも、バイオディーゼルを使っています。京都市や香川県善通寺市でも廃食油から作ったバイオ燃料でゴミ収集車や市バスが走っています。静岡県トラック協会は、バイオ燃料を自分たちで使っていきたいと調査研究を進めているそうです。

日本でいっそうバイオディーゼルを促進するためには、税金(軽油税)の対処や規格、法整備を進める必要があります。2002年7月には、菜の花のバイオマスエネルギー等に着目し、これからの日本社会のあり方、地域社会の姿を模索し、調査・研究を進め、政策提言等を行なうための「菜の花議員連盟(仮称)」が設立されました。
http://www.nanohana.gr.jp/more/giin/

たとえわずかであっても食糧自給率アップにもエネルギー自給率アップにもつながりますし、「地域での小さな循環」を実現していく大きな可能性を有している取り組みです。地域おこしや環境学習、市民・行政・企業のコラボレーションの場としても、「菜の花プロジェクト」はいま熱い注目を集めています。

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