ニュースレター

2003年03月01日

 

日本の水資源と雨水利用

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JFS ニュースレター No.6 (2003年2月号)

モンスーンアジアに位置する日本には、世界の平均降雨量の2倍近くの雨が降ります(人口が多いので、一人あたりの降雨量は世界の5分の1といわれます)。年平均降雨量は1,718mmですが、近年小雨化傾向が見られます。

平成10年度の「日本の水資源」(国土交通省水資源部)によると、日本の年平均降雨総量は6,500億立方メートルで、蒸発散量が2,300億立方メートル、平均水資源賦存量は4,200億立方メートル。そこから農業用水に549億立方メートル、工業用水に148億立方メートル、生活用水に132億立方メートルが使われています。

また地下水から、農業用に39億立方メートル、工業用に49億立方メートル、生活用に40億立方メートルが使われ、それぞれの用途や段階で排水が河川などを経由して海洋に入っています。これが大まかな日本の水循環の全体像です。

水使用の現状を見ると、1999年の日本の水使用実績(取水量ベース)は、約877億立方メートル/年。内訳は、農業用水が約579億立方メートル、工業用水約135億立方メートル、生活用水が約164億立方メートルです。1975年以降の統計を見ると、水使用総量は約27億立方メートル増えていますが、内訳を見ると工業用水は31億立方メートル減少している一方で、生活用水が50億立方メートル増えています。

工業用水の使用量が減少しているのは、回収率の増加のためです。現在の回収率は78.1%で、対前年比0.1ポイント増となっています。

生活用水を有効水量ベースで見ると、約143億立方メートルで、一人一日平均使用量は、322リットル/人・日となります。1974年に比べると、生活用水の総使用量は約63%増加しており、一人一日平均使用量も約30%増えています。

家庭生活での水の使途を見ると、洗濯20%、炊事22%、トイレ24%、風呂26%などとなっています。

日本では、1994年に異常渇水が起き、西日本を中心に大きな問題となりました。また、ダム建設に伴う環境破壊にも注目が集まるようになっています。

断水や給水制限を受けた経験のある人が約40%にのぼるなど、渇水や災害時の水供給への関心が高まっています。節水意識の高まりは、節水を実践している人の割合がこの15年間で約30%も増えていることにも表れています。また、雨水や再処理水の利用を望む人が約75%、「個人負担が伴っても家庭に導入してもよい」が約36%と、水の有効利用に対する意識が高いことがわかります。

家庭では、蛇口に節水コマをつけて流量を減らしたり、風呂の残り湯を洗濯や庭の水撒きに使うなど、家庭内の節水に気をつける人が増えています。

日本では、1960年代から70年代にかけて、工業発展に伴う地下水の過剰な汲み上げにより、各地で深刻な地盤沈下が問題となりました。その後、地下水の汲み上げを規制する条例その他が整備され、地盤沈下はほぼ収まった地域が多いようです。2000年度に、年間2cm以上沈下した地域は、日本中で7地域6平方キロメートルでした。

参考:環境省「全国地盤環境情報ディレクトリ」

日本では今後、農業用水の効率的な利用や、一般家庭やオフィスでの節水をいっそう進める必要があります。それとともに、日本が世界の水状況に大きな影響を与えている問題をも考える必要があります。

それは、日本が農作物をはじめ、工業製品、木材などの多くを世界中の国々から輸入していることです。たとえば、日本の小麦の自給率は9%、豆類は5%です。日本が輸入している小麦を生産するために必要な水は11億立方メートル、大豆は20.4億立方メートルに上ります。農作物の輸入だけで、年間約50億立方メートル(日本の総人口の約1/3の使用量に匹敵)の世界の水を使っていることになります。

水を大量に使う繊維製品も、全需要量の60%以上を輸入に頼っています。また、日本は世界第1位の木材輸入国で、世界中の輸出量の25%を占めています。日本が輸入している食料品や工業製品等を生産するためには、約400億立方メートルの水が必要だと試算されています。

日本に降る雨をどのように大切に使うか、は日本にとって重要な問題です。しかし、世界の他の地域に比べて雨に恵まれた日本が、食糧の60%(カロリーベース)や木材の80%以上を輸入に頼っていることは、世界にとって重要な問題です。自国の自給率を高めることで、農作物や木材などに形を変えた他国の水の"輸入"量を減らしていくことも、「水問題」に関する日本の重要な課題であると考えられます。

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