私たちが生きるこの日本が、今後数十年、数百年に渉って豊かな社会であり続け、持続可能な社会を実現するためには、現行の社会モデルの変革、パラダイムシフトが不可欠と考えます。以下に「2050年の日本が持続可能な社会をある程度まで実現している姿」を4つの基軸ごとにまとめました。
環境は持続可能性の母であり、持続可能性の最も重要で、包括的概念です。
自然環境は、生態系が維持され、日本の在来種が絶滅危惧種も含めて手厚く保護され、生物多様性が守られます。生命のゆりかごである干潟や湿地は、それらの生み出す付加価値や資産が環境会計により科学的に適正評価され、これ以上破壊されたり、埋め立てられることはありません。厳格な環境アセスメントによって不必要な公共事業はもとより、生物多様性を損ねる開発は行われません。今後行われる開発事業は、自然修復に向けて投資がなされます。生態系の基盤である原生林も保護され、森と海とが深くつながり、それが日本の自然循環のベースとなります。
風土環境は、人と自然とが共生する田園や里山、鎮守の森、疎水といった日本古来の知恵によるくらしと自然環境との調和のしくみが、世代を越えて継承されます。環境教育は、学校・社会教育においてそれぞれ大きく進展し、一人ひとりの環境リテラシーが向上し、生命を大切にし、「もったいない」をひとつの価値基準としたグリーン購入、エコライフが当たり前のこととして定常化します。
個人の価値観を基盤としたライフスタイルの大きな転換と、社会システムのパラダイムシフト、持続可能な経済への構造改革が三位一体となって推進された結果、バランスの取れた調和が実現されます。それにより、京都議定書の達成も含め二酸化炭素の排出量は大幅に減少し、廃棄物も大きく削減され、環境と経済の好循環がシステムとして定着します。都市においてはヒートアイランド現象が解消され、光化学スモッグの発生も抑えられます。